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ネット情報について - vol.57 -

現在ネット上ではあらゆる情報が氾濫し、健康や医療に関する情報を簡単に発信したり利用できる時代になってきました。調べることも容易なことから便利な反面、十分に吟味されていない情報が安易に発信されていることで、混乱を招くことが多くあります。


なかにはいろいろネットで調べ、「かなり勉強していますので…」と自分の口腔内を詳細に専門用語を並べて説明して下さり、「自分は過去にこういう治療法で行ない(不平不満)、現在はこういう状況だから、今後こういう治療をして、こういう被せ物をしてくれれば、きっと良くなると思いますからお願いします。」と自分で計画されてくる方がいらっしゃいます。

このような場合はネット情報からの思い込みが強いため、こちらサイドの意見をあまり聞き入れないことが多くあります。
内容が的を得ているのであればいいのですが、的外れや間違った解釈をされている場合は特に困りもので、自ら主治医になり、無理難題を自分の思い通りに貫き通そうとする場合もあり、ほどほど手を焼くこともあります。

また患者さんが思っている病状と実際では全く違っていたり、自身の思い込みによる診断で混乱し我を失ってしまったりすることも多く、自分で診断・治療方針をお決めになることは非常に危険なことです。


私からすれば確かに勉強はされていることはわかりますが、ほとんどが総合的な判断ではないため、表面上でとても浅はかな計画案が多いように思います。


診断や治療計画は患者さんの希望を踏まえたうえで、メリット・デメリットをしっかり知っていただき、複数の診査要素を総合的に判断していくため、簡単に立案できるものばかりではありません。

例えば、むし歯の大きさ、進行具合、歯質の状態、痛みの有無、歯周病の病状、骨の状況、保存治療の難易度、治療後の耐久性、他の歯への影響度、噛み合わせのバランス、歯磨きが適切に行なえる口腔内環境であるか、患者さんの歯磨き能力、悪習癖の有無、年齢、性格などなど判断項目を具体的に挙げていくと、詳細な項目を含めればおそらく何十項目にもなるでしょう。そのため患者さんとしっかり話し合うことで、ベター or ベストな治療法をいっしょに煮詰め、計画することが大切なことになります。


自分の考えはとても大切なことですが、紙面上のネット情報だけに目を向けず、専門家の生の声の意見に耳を傾けてから計画したほうが、内容を熟慮した総合的な判断ができるのではないでしょうか。


ネット上の情報をすべて鵜呑みにとらえ、専門家の意見を聞かずして自己判断することは賛成できることではありません。