むし歯・歯周病/歯石
歯石とは
歯石の特徴
歯石は歯垢と唾液中のカルシウム成分と混ざり石灰化し、歯の表面に付着したものです。
石灰化した歯石の表面はザラザラしているため、新たな細菌が繁殖しやすくなります。そして歯石は徐々に厚くなり硬さが増していきます。歯石自体には為害作用はありませんが、歯垢を蓄積させやすく、除去しづらくさせます。そのため歯肉を刺激し、少しずつ炎症を悪化させ、歯を支えている骨までもが知らず知らずのうちに破壊されてしまうのです。結果的に歯石は歯周病の大きな原因となるのです。
また、歯石には2種類あり、歯と歯肉の境目より上(露出している歯の表面)に付着している歯肉縁上歯石と、その境目より下(歯肉の中の根の表面)に付着している歯肉縁下歯石に分けられます。歯肉縁上歯石は、比較的軟らかく、白色または黄白色で、歯肉縁下歯石は、硬く、茶褐色または黒褐色しているのが特徴です。
歯肉縁下歯石
症例 1 / 42歳 女性
「数日前から痛みが続き、現在は痛み止めを飲んでも痛みが治らず、頭までガンガン痛みます」と来院されました。
- 歯の周囲から大量の膿が出て、歯が前後左右上下に動く状態でした。
- 抜歯後、歯を観察すると部分的にかぶせた冠の下に歯石が多く付着していました。
症例 3 / 63歳 女性
「数年前から違和感があり、最近グラグラして噛めないので治して下さい」と来院されました。
- レントゲン診査してみると、臼歯2歯を支えている骨が溶け、歯が宙に浮いている状態です。調子が良くない頃から自分なりに歯磨きをしっかり行なっていたため、歯肉の炎症は軽減されていますが、保存困難と判断し抜歯しました。
- 根の先端に突起状の歯石が付着していました。
歯石除去
歯石を除去する最大の目的は、歯周病の発症を促進させてしまう可能性があるためです。
ザラザラと石灰化した歯石の表面は、歯垢が沈着しやすく、病原菌の定着・増殖を促進します。
そのために歯石を除去します。
歯石を除去するタイミング
歯石は闇雲に除去すればいいというものではありません。除去するタイミングが大事です。
一刻も早く歯石を取ったほうがいいのでは…と思われるかもしれませんが、まずは歯磨きで歯石の上に蓄積している歯垢を少しでも除去し、歯石除去する前にできる限り歯肉の炎症を抑えておきたいのです。炎症が著しい場所には細菌が多く、適切な処置ができません。
歯石自体は石灰化したものなので悪さはしません。しかし、歯石の表面に付着した歯垢が悪さをし、炎症を進行させてしまいます。そのため歯石を残したままの状態で歯磨きし、炎症を抑えたうえで歯石を除去すれば、処置もしやすく、術後も良好に経過します。そのためには歯石を除去する前に、歯磨きの確認 が大切になります。
歯磨きの確認
歯石が付着している場所には、常に同じ場所に歯垢が付着していると思ってください。歯石が付着しているからといってただ歯石を除去するだけの処置では、いずれまた歯石が付着しやすい状況にあります。歯石が付着したら除去する処置を繰り返すよりも、歯石を除去する前に歯の磨き方を一度確認して、歯石の元となる歯垢を常に除去できる歯磨き方法を習得してもらいたいのです。そうすることにより、歯石を取った後も良い環境が保て、歯石が付着しなくなります。常に歯磨きが行き届いていれば、歯垢が石灰化する前に除去されるので、歯石になることはありません。
「歯石が付いたら取る」よりも「歯石が付かない環境」 にできれば理想です。そのためには、確実に歯垢を落とせる歯磨きの技術をマスターしておきたいものです。
歯石除去のタイミングと歯磨きは歯肉を健康に保ち維持させるために、密接な関係にあるのです。
症例 1 / 59歳 女性
初診時
- 歯と歯の間とその周囲に歯石とプラークが固まりで付着しています。
- 歯肉も発赤腫脹しているため歯ブラシ指導を行ないました。
- 歯磨きをしたとたん出血する状態でした。
3週間後
- 歯と歯の間の汚れが取れはじめています。
- 歯ブラシによる歯磨きにより出血も治まり、周囲の歯にもブラッシングによる効果があらわれています。
- ここで歯と歯の歯磨きを行なう歯間ブラシの指導を追加することにしました。
- 歯と歯の間の汚れが更に取れ、周囲の歯肉も引き締まってきました。
- 歯石の上に付着していたプラークもきれいに除去されています。
- このタイミングで歯石を除去しました。出血に邪魔されず痛みもなく歯石を除去することができました。
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