症例集/犬の歯の治療(番外)
動物病院で行った飼い犬の治療
とある日、右上奥歯の歯が部分的に欠けて、歯の神経が露出しているのをみつけました。慌てていつもお世話になっている獣医さんに受診したところ、犬の歯の治療をする動物病院は東京にあるとのことでしたが、通常は歯科治療は行なわず、そのまま経過観察か抜歯になると言われました。
どうするべきか?迷いましたが、「実際の犬の歯の治療は、人間と同じです。使用する薬剤 ・ 手順も同じですから、もしよかったら麻酔の管理はしっかりやらせていただきますので、先生が治療されてはどうでしょう?」と獣医さんの温かい提案で、愛犬の治療を獣医さんと協力し合って行なうことになりました。
処置は「神経の保存療法」 「破損部の修復治療」を2回に分け、全身麻酔下にて行ないました。小さい時から食欲旺盛でしたが、歯が欠けて神経が露出していた頃はあまり食欲もなく、いつもの半分の量をいつもの倍の時間をかけて食べる状態でした。おそらく何か違和感を感じていたのでしょう。
処置後は今まで通り食欲旺盛です。
「歯の大切さ」「食の大切さ」をしみじみ愛犬に教えられ、貴重な体験をさせてもらいました。
ミニチュアダックスフンド ♀(6歳2ヶ月)
上顎右側 P4 歯冠部 部分破折・露髄症例
- 歯の一部が割れて歯の神経が露出しているために出血しています。
- 出血部を消毒・止血、神経の保存を試みることにしました。
- 神経の露出部に水酸化カルシウムを貼薬しました。
- 薬が漏れないように覆い、他の破折部を除去し、仕上げ削りまで行ないました。
- 専用のトレー(個犬トレー)を作り、精密印象を行ないました。
- 採れた歯型です。
- 歯の形・大きさを把握するため、反対側の同じ歯型を参考のために採得しました。
- 歯型に樹脂を流し歯の形態を参考に…。
-
犬の頭蓋骨を参考のためにお借りし、補綴物の形態を検討。
- 頭蓋骨・反対側の歯を参考にWAX UP。
- 白金加金合金にて鋳造・研磨、完成。
- 金属のかぶせ物を試し合わせ。
- 接着性のセメントにて合着。
- かぶせ物の表面に少しプラークと歯石がありますが、歯肉の状態もよく良好に経過しています。
- 治療は全身麻酔下で2回に分け、マイクロスコープを使って行ないました。
- かぶせ物は頬側は補強のため全面を覆うタイプ。舌側は噛み合わせに支障が出ない場所までを覆うタイプで仕上げました。
- かぶせ物は3年経過しましたが、何事もなく順調に経過しています。
ご協力頂いた動物病院さん
- しかたに動物病院 http://shikatani.info
しかたに動物病院 大竹啓之 院長先生をはじめスタッフの皆様にはお忙しい最中、万全な体制でサポートしていただき感謝するとともに心よりお礼申し上げます。
お断り
ここで紹介する犬の歯の治療は、当医院内で行なった治療ではなく、かかりつけ医の動物病院内で獣医師さん協力のもと行なったものです。尚、使用した機材・材料等は全てこの症例のために準備したもので、通常診療では使用していません。また、この症例は飼い犬に行なったものであり、動物の歯の専門医ではないため、動物等の治療相談はできかねますのでご了承ください。
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