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セラミック治療はむし歯にならない ? - vol.76 -

「金属の被せ物をすると歯との隙間から徐々に細菌が侵入し二次カリエスという新たなむし歯になることがあります。むし歯ができないセラミックの被せ物の方がいいですよ。」

「セラミックは歯質に接着させることができます。よって、歯と化学的に一体化するので隙間から細菌が侵入することを防ぎ、新たなむし歯の発生を防ぐことができます。」

「銀歯は手作業で経験と勘で作るため、歯と金属の間に隙間ができむし歯になってしまいますが、セラミックはコンピューターに読み込ませ機械で削りだすため、誤差がほとんどないためむし歯になりにくいです。」


セラミック治療を獲得するために患者さんに伝える情報の一例ですが…
個人的にはあまりに軽薄で誤った上記のような情報を一般の方に流すことは如何なものかと思います。




何が軽薄で誤った情報か…



金属だからむし歯ができ、セラミックだからむし歯ができない ? 
金属もセラミックも材質自体にむし歯ができることはありません。金属で修復した場合でもセラミックで修復した場合でも、残っている歯を生かして修復するわけですから、残っている歯の部分に細菌が付着していれば、どちらの被せ物でも残っている歯にむし歯が再発する可能性はあります。
よってセラミックだからむし歯ができないということは決してありません。




金属は歯と隙間があり、セラミックは一体化するから隙間がない ?
どちらの材質を使っても精度が良い被せ物にはほとんど隙間ができません。
しかし、精度が悪い被せ物はどの材質でも隙間があります。よって金属には隙間が開き、セラミックは化学的に一体化するということは決してありません。
隙間は材質で決まるものでなく、技術で決まるものです。




手作業で作ったものは隙間ができるためにむし歯になり、機械の削りだしの方は誤差がほとんどないのでむし歯になりにくい ?
どちらの手法でも技術が伴えば素晴らしい被せ物ができますが、手を抜いたものはどちらも精度が悪い被せ物になります。
機械で削りだしをする場合、歯を削るのは人がやり、コンピューターに読み込むのも人がやります。機械はただ読み込んだものを削りだすだけで、とても細かな部分の再現はできず最終的には人が手を加え修正・調整します。
機械で作った被せ物の方が精度よくできるのではないかと思う方は、本当の歯科技工士の技術を知らない方ではないかと思います。
機械で作られた被せ物より技術に優れた技工士の手で作られた被せ物は、細かな部分まで再現でき形態も精度も素晴らしいものです。
究極の技術面では人の手に勝るものはないのです。



冒頭のような説明を耳にすると飛びつきたくなる気持ちはわかりますが、材質でむし歯ができる・できないというあり得ない情報に惑わされないで下さい。むし歯の発生には材質より精度が大きく関係し、生活習慣(食生活・歯磨き習慣など)も重要になりますので、最終的には治療技術(削る・型採り)や製作技術と患者さんの歯に対する心掛けで決まるものです。



セラミック治療は適切な考えで適切に行なえば素晴らしいものです。
しかしここで言いたいのは、「セラミック治療はむし歯にならない」「セラミックは歯と化学的に一体化する」「セラミックは隙間がない」など、あまりに誤った情報を自費治療の増収目的で患者さんに提供することはあってはならないということです。



おいしい材質情報だけを信じる前に、技術と予防法で予後に差が出ることを知っておいて下さい。