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歯科治療の宿命 - vol.81 -

人の歯は乳歯から永久歯に生え変わり、永久歯がなくなると二度と生え変わることがありません。
永久歯列が完成してからは時間の経過とともに歯の数が増えることもありません。
そして時間とともに経年変化が起こり、例えむし歯や歯周病がなくても変化は起きます。年とともに歯の色が濃くなったり、歯が減ってきたり、細かなひびが目立ったり、歯並びが乱れたり などいろいろな経年変化が起きます。これはごく一般的なことで身体の各部においても同じことが言え、ある時期から加齢とともに老化が始まりこれに逆らうことはできません。
生体は見た目だけでなく、組織・細胞レベルで老化するため、経年変化は避けられないのです。


何らかの理由で歯科治療した歯は、どんな治療をしたとしても元の状態に戻るわけではありません。人工物で補い回復したと思って下さい。
治療した歯は永久的に心配ない・大丈夫とは思わないで下さい。その時の状態や考えでできるだけの治療は提供しますが、対象相手が生体であり経年変化することを理解しておいて下さい。


治療した歯は治療を終了した直後から経年変化が始まり、いつの日か再治療が必要となる可能性があります。気持ちの上では再治療しなくて済む治療を心掛け、経年変化からくる再治療に備え将来を見据えた計画をするのですが、個々に生活環境、生活習慣、老化のペースなど全てが異なるため、予測すること自体が難しいのです。


歯の治療を行う時、患歯だけに目を向けず、患歯の周囲、対合歯の状態、そして口腔内全体、環境、習癖、習慣、性格なども考慮することが大切で、ただ目先の治療を繰り返していては再治療を繰り返す頻度は増え、いずれ歯を失う確率は高くなるでしょう。


治療した歯を永久的に安定させることは困難ですが、再治療に至るまでの時期を延ばすことは、医療者と患者さんの共同作業で可能なことです。そのためにはお互いにどう向き合うかが鍵になるのではないでしょうか?


一度治療した歯は元には戻りません。長らく良い状態を保つにはそれなりの計画、予防、治療、健診などが大切なのですが、経年変化することも知っておいて下さい。