トップページ > 私考 > vol.75 歯科治療は材料よりも手技が大事 …


歯科治療は材料よりも手技が大事 - vol.75 -

歯科材料の進歩が目覚ましく進む中、材料の寿命について触れたいと思います。

むし歯になったり、欠けたり、再治療だったり 歯科治療をする場合何かしらの材料を使用します。
その多くはレジン(樹脂・プラスチック)・セラミック・金属が主な素材になります。

これらの素材の中で最も歴史が古く実績のある素材は金属ですが、最近はメタルフリーの風潮から隅に追いやられる傾向にあります。

また現在ほとんど使われなくなったアマルガム(水銀化合物)は、かなり敬遠される材料ですが、臨床的な経過を観察すると、実は予後がかなり良好なものが多いようです。
接着剤等を使用しないで歯に直接詰めるアマルガムは、硬化の際わずかに膨張する特性があるためより歯にフィットし、銀が多く含まれるためむし歯の再発も防げる特長がありました。
よって現在も臨床でたまに見かけるアマルガム充填も20~40年位前に治療したものがほとんどで、中には良好な経過を得ているものも多くあります。

「アマルガムは身体に良くないため、積極的に詰め直ししましょう。」と謳う歯科医師もいますが、現在まで良好に経過してきている状態で、患者さんが審美的に気にされたり、アレルギーの問題がなければ、個人的にあえて詰め直す必要ないと思っています。


インレーやクラウンも同じことが言えます。
メタルフリーの風潮から金属系のインレーやクラウンをあえてレジンやセラミックに交換する治療も良く目にしますが、レジンやセラミックに替えたからといって必ずしも万能とは言えません。
見た目は白くて魅力的ですが、絶対的な強度面で金属には劣り、材質の劣化や摩耗そして破折も金属には劣ります。


したがって審美的な要素も考慮しつつ、経年的な安定を保つには材料を適材適所で選択することが大切になります。


インターネットの普及によりある程度の知識を得て来院時に材料を決めてこられる患者さんもいらっしゃいますが、大切なことは材料で歯の寿命が決まるほど単純なことではないことを知っておいて頂きたいと思います。


我が国の歯科治療の現状は、歯磨きができていない 歯肉炎があるような口腔内環境でもどんどん治療を進めたり、むし歯を取り残して詰め物をしたり、根管治療がおろそかにも掛かわらず被せ物を装着したり、適切な形成印象もできていないのに高価な被せ物をしたりと、基礎治療もままならないのに素材だけいいものを提供する風潮もあります。


どのような材料を使っても適切な治療や噛み合わせに不具合があれば、近い将来何らかの症状が現れる確率は高くなり、歯の寿命にも影響を与えかねません。


よって材料選びを優先にするよりも技術の優れた歯科医院選びをすることが重要です。
そして個々にあった材料選びと話し合いがもてる環境が少なからず必要ではないでしょうか…