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歯周病 Part 5「バイオフィルム」について - vol.51 -

バイオフィルムとは、複数の細菌が集まった粘液性の集合体です。みなさんの身近なところにもたくさん存在していますがご存知でしたか? お風呂・台所の排水口や花が入っている花瓶などに発生したヌメリと同じと思っていただけるとわかりやすいと思いますが、このバイオフィルムは口の中にも発生します。歯の表面で細菌がバラバラに存在している程度でしたら怖い存在ではありませんが、細菌同士が自分の身を守るように集合し始めることで手強い存在になってしまいます。

主に歯の表面や歯周ポケット内に形成されると言われていますが、表面に強固に付着する性質があり簡単には剥がれません。そして抗菌性の薬剤も浸透させないほど強い性質も持っているため薬に頼った除去法も困難と言えます。


歯の表面に付着したプラークは砂糖を栄養源に増殖を繰り返し、それが溜まって厚い細菌の層「バイオフィルム」を形成します。バイオフィルムが付着していると、歯を守っている唾液が自浄作用という役目を果たせないばかりか、バイオフィルムの下で細菌群がどんどん酸を作り出しむし歯ができる環境になってしまいます。
バイオフィルム化した細菌の集合体は洗口剤などでは全く除去できず、歯ブラシ・歯間ブラシなどで機械的に除去するのが効果的です。


歯と歯肉の堺目にバイオフィルムが形成され停滞し続けると、歯周ポケット内に侵入しさらに活動範囲を広げます。歯の表面に付着しているバイオフィルムの除去は比較的容易ですが、歯周ポケット内となると状態にもよりますが、少々厄介になります。

まず常に自分で機械的に除去するのはおそらく無理でしょう。もちろん薬剤などを使ったとしても高濃度でない限りバイオフィルム内部の細菌を退治するのは困難でしょう。
よって歯周病で悩んでいるみなさんの歯周ポケット内のバイオフィルムの対策は、専門家による定期的なお掃除が効果的です。歯の表面を含めた歯周ポケット内のクリーニングをお勧めしますが、常に歯の表面や歯と歯肉の堺目がきれいに手入れされていてはじめて歯周ポケット内のクリーニングが効果を発揮しますから、日頃のお手入れがとても大切になります。



皆さんもお風呂や台所に付着したこのヌルヌルしたヌメリの除去掃除を体験したことがあると思いますが、なかなか厄介ではありませんか。細菌のネバネバした集合体ですから時間が経った場合は除去が困難になるのも無理ありません。

口腔内でも細菌の集合体を除去するのは時間が掛りますし、そのような環境のままでいるとむし歯ができたり、歯周病が発症・悪化したりしますから、細菌が強力な集合体になる前に自分で口腔内ケアをすることが最も大切です。

私は歯周病もなく、常にお手入れが行き届いた健康な口腔内環境を維持されている方には、歯周ポケット内を積極的にクリーニングする必要はないと思っています。なぜなら常に環境を整えてあれば、歯周ポケット内は生体防御システムが働いていますし、細菌が増殖して悪さをしないよう予防対策をしっかり確実に行っていれば、健康に維持できるからです。
その証拠に私もスタッフも自身の歯周ポケット内のクリーニングを定期的に行なうことはありません。それでも歯肉も歯周ポケットも健康な状態を保っています。


日頃から自分でしっかりお手入れをし、必要に応じて歯科医院での定期的なクリーニングが健康な口腔内環境の維持につながりますから、自分の口腔内事情を知ったうえで最良なケア方法を見つけて下さい。