「表と裏」「本音と建前」 - vol.66 -
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農家さんの多くは出荷用には農薬をかけ栽培し、自分達で食べる物には無農薬もしくは極力少ない量に留めていると聞きます。
それは商品として農作物を販売するには中身よりまず見た目が重要視されているためで、害虫から農作物を守り商品としての基準をクリアしなければならないからでしょう。
しかし生産者は安全な農作物を食べます。
生産者は自分たちが食するものの基準に何を一番にしているのでしょうか。
それは安全安心ではないでしょか。
しかし出荷用と消費するものを分けなければならないのは生活していくための「表と裏」「本音と建て前」ではないでしょうか。出荷用に虫食いなどのクレームがあれば農協から厳しい声が掛かり出荷停止になる可能性もあります。
農薬を散布したならどのような農薬をどれくらい散布したか明示し、情報を公表した上で消費者が選ぶシステムがあってもいいように思います。消費者の中には安全よりも見た目を重視する方もいれば、安全安心を選ぶ方もいるでしょう。もちろんとにかく安いものを選ぶ方もいるでしょうし、多少高くても安全な品を選びたいという方もいるでしょう。
消費者に知らされていない事実が多くあり過ぎるのが問題ではないでしょか。
農薬の話をひとつの例として取り上げましたが、歯科医療にもこのように酷似した話は沢山存在しています。
臼歯部の治療で広範囲に詰め物をする場合、患者さんには樹脂系(レジン)を勧めることが多いでしょうが、医療者自身自分の歯にこの樹脂系を広範囲に詰めることを選択する人は少ないでしょう。
それは樹脂系の利点欠点を知っているからです。
また金属系の補綴物を装着する場合、医療者は保険枠で使用する金属を選択する人はほとんどいないでしょう。それは使用している金属成分の良し悪しを知っているからです。
また神経のある歯にセラミックを被せる治療を希望すると、簡単に神経を除去してオールセラミックを被せる治療を勧める歯科医がいますが、もし自分の歯だったら神経を除去してまでオールセラミックを選択する人はいないでしょう。それは歯の神経の役目・重要性を知っているからです。
一部を紹介しましたが以上のように多くの本音と建前があるようです。
このようなことはどの業界でもあることでしょうが、情報提供をもう少し提示した上で消費者が選択できる場と環境がほしいものです。
セラミックが最も良い 割れやすい
ファイバーは歯根破折を予防できる 接着力が弱い
樹脂系(レジン)が対合歯に優しい 減りやすい
インプラントは安全 危険
金属は身体に悪影響を与える 強度があり長持ちする
などなど世間ではいろいろな情報が飛びかい溢れています。どの材質にも利点欠点があり患者さん個々に口腔内環境が異なるため、すべての方に同じような条件で提供できるわけでもありません。
上辺だけの情報を鵜呑みにした判断はかえって不適切な環境になってしまうかもしれませんので、トータル的に考慮した計画をお勧めします。
昔から当たり前のように使われてきた金属系の被せ物は、歴史も長く世界的にも実績がかなりあります。
金属系の詰め物も同じことが言えます。現在は水銀の問題でほとんど姿を消してしまったアマルガム充填も実は適切に行なった治療では極めて良好な経過を得ているものも多くあります。
そのため金属系の詰め物・被せ物は長期に安定した状態を保てる特徴があり、長い場合は30年~50年持っているものもあります。
しかし主に審美目的で使用しているセラミックや樹脂系(レジン)はどうでしょうか?
近年材質が目覚ましく向上していますが、お世辞にも必ずしも万能ではありません。
審美的要素には優れていますが、摩耗や破折といった経年的劣化と強度の点では金属系にはかないません。
そのため審美的な満足度と長期的な安定を得るには、患者さんの歯はもちろん、骨格・噛み合わせそして生活習慣・習癖も個々に異なるため、状態を把握しての材質選びを提供することが大切ではないでしょうか?
もちろん患者さんの好みによる選択も重要ですが、医療者の立場からセラミックが良さそうな場合、金属系が良さそうな場合、樹脂系が良さそうな場合 またセラミックを避けた方が良さそうな場合、金属系を避けた方が良さそうな場合、樹脂系を避けた方が良さそうな場合など、状況によって選択基準が異なって当然です。
材質にはそれぞれ特徴がありますから偏った提示ではなく、臨機応変に患者さんに見合った材質選びの提示も必要かと思います。
歯科医師の中には、
セラミックが良いと聞けばセラミックだけ、ファイバーが良いと聞けばファイバーだけ、ダイレクトボンディングが良いと聞けばダイレクトボンディングだけを扱い、他の材質や手法は悪者扱いにしていることが多いようですが、これでは流行ものだけを扱うただの○○の一つ覚えになってしまいます。
近年歯科治療は審美的要因に非常に重きを置き、長期の安定と強度を考慮した設計が薄れてきているように思えてなりません。
冒頭でお話しした農家さんの話とかぶりますが、患者さんにうける材質、そしてより利益になるものを強く勧める傾向が多く、農家さんが安全安心なものを食するように歯科医師も自分が得する材質選びではなく、患者さんにあった材質選びの提示をしてから、話し合いで選択する場があってもよいのではないでしょうか。
今後は材質選び以上に歯科医師選びのほうが重要になるかもしれません。
それは商品として農作物を販売するには中身よりまず見た目が重要視されているためで、害虫から農作物を守り商品としての基準をクリアしなければならないからでしょう。
しかし生産者は安全な農作物を食べます。
生産者は自分たちが食するものの基準に何を一番にしているのでしょうか。
それは安全安心ではないでしょか。
しかし出荷用と消費するものを分けなければならないのは生活していくための「表と裏」「本音と建て前」ではないでしょうか。出荷用に虫食いなどのクレームがあれば農協から厳しい声が掛かり出荷停止になる可能性もあります。
農薬を散布したならどのような農薬をどれくらい散布したか明示し、情報を公表した上で消費者が選ぶシステムがあってもいいように思います。消費者の中には安全よりも見た目を重視する方もいれば、安全安心を選ぶ方もいるでしょう。もちろんとにかく安いものを選ぶ方もいるでしょうし、多少高くても安全な品を選びたいという方もいるでしょう。
消費者に知らされていない事実が多くあり過ぎるのが問題ではないでしょか。
農薬の話をひとつの例として取り上げましたが、歯科医療にもこのように酷似した話は沢山存在しています。
臼歯部の治療で広範囲に詰め物をする場合、患者さんには樹脂系(レジン)を勧めることが多いでしょうが、医療者自身自分の歯にこの樹脂系を広範囲に詰めることを選択する人は少ないでしょう。
それは樹脂系の利点欠点を知っているからです。
また金属系の補綴物を装着する場合、医療者は保険枠で使用する金属を選択する人はほとんどいないでしょう。それは使用している金属成分の良し悪しを知っているからです。
また神経のある歯にセラミックを被せる治療を希望すると、簡単に神経を除去してオールセラミックを被せる治療を勧める歯科医がいますが、もし自分の歯だったら神経を除去してまでオールセラミックを選択する人はいないでしょう。それは歯の神経の役目・重要性を知っているからです。
一部を紹介しましたが以上のように多くの本音と建前があるようです。
このようなことはどの業界でもあることでしょうが、情報提供をもう少し提示した上で消費者が選択できる場と環境がほしいものです。
セラミックが最も良い 割れやすい
ファイバーは歯根破折を予防できる 接着力が弱い
樹脂系(レジン)が対合歯に優しい 減りやすい
インプラントは安全 危険
金属は身体に悪影響を与える 強度があり長持ちする
などなど世間ではいろいろな情報が飛びかい溢れています。どの材質にも利点欠点があり患者さん個々に口腔内環境が異なるため、すべての方に同じような条件で提供できるわけでもありません。
上辺だけの情報を鵜呑みにした判断はかえって不適切な環境になってしまうかもしれませんので、トータル的に考慮した計画をお勧めします。
昔から当たり前のように使われてきた金属系の被せ物は、歴史も長く世界的にも実績がかなりあります。
金属系の詰め物も同じことが言えます。現在は水銀の問題でほとんど姿を消してしまったアマルガム充填も実は適切に行なった治療では極めて良好な経過を得ているものも多くあります。
そのため金属系の詰め物・被せ物は長期に安定した状態を保てる特徴があり、長い場合は30年~50年持っているものもあります。
しかし主に審美目的で使用しているセラミックや樹脂系(レジン)はどうでしょうか?
近年材質が目覚ましく向上していますが、お世辞にも必ずしも万能ではありません。
審美的要素には優れていますが、摩耗や破折といった経年的劣化と強度の点では金属系にはかないません。
そのため審美的な満足度と長期的な安定を得るには、患者さんの歯はもちろん、骨格・噛み合わせそして生活習慣・習癖も個々に異なるため、状態を把握しての材質選びを提供することが大切ではないでしょうか?
もちろん患者さんの好みによる選択も重要ですが、医療者の立場からセラミックが良さそうな場合、金属系が良さそうな場合、樹脂系が良さそうな場合 またセラミックを避けた方が良さそうな場合、金属系を避けた方が良さそうな場合、樹脂系を避けた方が良さそうな場合など、状況によって選択基準が異なって当然です。
材質にはそれぞれ特徴がありますから偏った提示ではなく、臨機応変に患者さんに見合った材質選びの提示も必要かと思います。
歯科医師の中には、
セラミックが良いと聞けばセラミックだけ、ファイバーが良いと聞けばファイバーだけ、ダイレクトボンディングが良いと聞けばダイレクトボンディングだけを扱い、他の材質や手法は悪者扱いにしていることが多いようですが、これでは流行ものだけを扱うただの○○の一つ覚えになってしまいます。
近年歯科治療は審美的要因に非常に重きを置き、長期の安定と強度を考慮した設計が薄れてきているように思えてなりません。
冒頭でお話しした農家さんの話とかぶりますが、患者さんにうける材質、そしてより利益になるものを強く勧める傾向が多く、農家さんが安全安心なものを食するように歯科医師も自分が得する材質選びではなく、患者さんにあった材質選びの提示をしてから、話し合いで選択する場があってもよいのではないでしょうか。
今後は材質選び以上に歯科医師選びのほうが重要になるかもしれません。
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