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甘い誘惑 砂糖 - vol.18 -

ここでお話することは砂糖のことです。塩分の摂り過ぎ、脂肪の摂り過ぎは、高血圧・心臓疾患・その他多くの疾患に関連するため摂取量に気をつけましょうとよく耳にしたり、目にすることがあります。しかし砂糖の摂取量に関しては、あまり取り上げられていないように感じます。砂糖も様々な疾患と関係し、むし歯・歯周病とは特に密接な関係がありますので、ここで少し砂糖の話題に触れてみたいと思います。

砂糖の摂取は、疲労回復に効果があったり、頭の回転がよくなると言われています。確かに適正な量であれば効果があると思います。しかし、砂糖の怖いところは強烈なインパクトのある美味しさを持っていることです。これは捨て難い魅力です。

周りを見渡すとスーパー・コンビニエンスストア・自動販売機がたくさんあり、甘くて美味しい食べ物・飲み物が所狭しと並んでいます。食べ物・飲み物に記載されている原材料名にほとんど砂糖と表記されています。知らず知らずのうちに砂糖に囲まれて生活しているのです。そのため習慣化しやすい調味料なのです。習慣は怖いものでエスカレートする傾向があります。気をつけて摂取していてもついうっかり食べたり・飲んだり、少しぐらいなら… なんて思うでしょうが、甘い味だけについつい意思も甘くなってしまうようで、次第に摂取量が増える傾向にあるものが砂糖の特徴です。

砂糖は少しの量でも、お腹が満たされます。それは糖分が他のものよりも早く即エネルギーに変わるため、脳がたくさんのカロリーが体内に入ったと勘違いしてしまい、他の食品を身体がほしがらなくなってしまうからです。



(1)砂糖が身体に与える影響

甘いもの大好きな人は、細菌やウイルスに対する抵抗力が弱くなります。もともと私たちの身体には病気に対して抵抗する力、治そうとする自然治癒力を備えています。その役割は主に血液が関与しますが、なかでも白血球は病気に対する抵抗力の根本ともいえる能力 喰菌作用と免疫作用の2つの重要な働きをします。

喰菌作用とは、体内に侵入してきた細菌やウイルスを素早く発見し食べてくれる作用で、私たちが持っている抵抗力の基本と言えます。しかしこの大切な作用も砂糖を摂り過ぎることによって、白血球の細菌を食べる力が弱められてしまいます。

免疫作用とは、ウイルスの種類に合わせて、それを破壊する専用の武器(抗体)を作り、記憶しておいて次に体内に同じウイルスが侵入して来たときには、その記憶をしておいた武器を使って抵抗するのです。しかしこの作用も、血液が汚れているとあまり抵抗力を発揮できません。

砂糖は血液を濁らせ、粘つかせるため血液が汚れるばかりか流れも悪くなるため、白血球の能力が驚くほど低下し、結果的に病気に対する抵抗力は低下し、治癒力も衰えてしまうのです。砂糖の摂取量をわきまえないと身体を知らず知らずのうちに蝕んでしまいます。



(2)砂糖が血液に与える影響

私たちの身体は血液が循環することによって身体各部の組織も生理的内部環境を調整し、その恒常性を維持しています。

本来血液は、弱アルカリ性ですが、強い酸性食品の砂糖が必要以上に摂取されると、血液が酸性化します。酸性化した血液を元の状態に戻す働きをしてくれるのがカルシウムです。体内のカルシウムの99%が歯や骨の硬さ・密度を作り出して保っています。残っている1%のカルシウムはイオンとなり、筋肉や細胞の柔軟な組織に含まれていたり、血液に溶け出し、血液中のカルシウム濃度を一定に保ち、重要な生理的機能の調整を行っています。

酸性化した血液は身体の生理的機能に悪い影響を与えるため、中和して正常化するため、柔軟な組織の中ではイオン状となり、必要に応じて血液中に溶け出すアルカリ性の物質 カルシウムが中和剤として登場するのです。ところが強い酸性食品である砂糖を習慣的に必要以上に摂取すると、細胞や組織内にあるカルシウムでは間に合わず、血液の酸性化を防ぐために歯や骨を溶かしてカルシウムを集め、中和することになります。このようなシステムが骨粗鬆症の原因にも影響を与えているといってもいいでしょう。



(3)砂糖が口腔内に与える影響

むし歯は、砂糖をエサにむし歯菌が大量に増殖し、酸を作り出し歯を溶かすことで発生します。砂糖が口に入る頻度と停滞している時間で、むし歯になる危険度は増します。

歯周病も砂糖の影響を大きく受け、歯肉が慢性炎症から歯を支えている骨が溶けてしまう疾患ですが、その主な原因の歯周病菌の繁殖は砂糖によって活発化し、進行を早めます。そして体内から取り入れられた砂糖の影響で歯肉や骨を守ろうとする抵抗力が低下し、治りにくい環境になってしまいます。

甘いものを食べても・飲んでも歯磨きすれば大丈夫と思われる方が多いですが、必要以上に口腔内・体内に取り入れられてると、とても歯磨き予防だけでは間に合わず、むし歯・歯周病から身を守ることはできません。

少し砂糖を悪者扱いしましたが、摂取量を間違えると身体に悪影響を与え兼ねません。分かっていても 気を付けていてもその魅力についつい手が出てしまいます。自分の思っている以上に摂取量の制限を心掛けなければ、悪の調味料に化けてしまいます。

知っているのと知らないとでは、常の意識が変わります。皆さんも正しい理解でお砂糖の魅力を楽しんではいかがでしょうか。