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再治療について - vol.43 -

できることなら患者さんも医療者も再治療を望まないと思いますが、歯科治療の多くは再治療です。

再治療といっても材料の減った部分の修復や材料の劣化に伴う交換治療などの比較的短期に治療できるものから、長期にわたり処置をしたり、全体の調和を整えたりと安易には治療できないものまで患者さんの口腔内環境で随分異なります。

少なからず再治療は以前より条件が悪い状態からの処置になることがほとんどですから、技術的にも高度な術を要する場合が多く、そして最初に行なわれていた処置よりも優れた処置をしなければ、満足した結果を得ることはできません。

そのため、再治療はとにかく時間と手間を要する場合が多く、見た目以上に厄介なものも多くあります。もちろん中には残念なことに再治療自体不可能な場合もあり、抜歯になることもあります。

手間の掛る再治療の多くは、患者さんが悪い状態を長期に放置してあった場合や医療者の不適切な処置により知らず知らずのうちに悪化している場合などですが、具体的な例を挙げると…


 ・歯の痛みを我慢し、痛みがなくなったから安易な考えでそのまま放置していたり…
 ・治療途中で通院しなくなったり…
 ・被せ物、詰め物がとれているにもかかわらず放置していたり…
 ・歯が抜けたままで放置していたり…
 ・不適切な根管治療で感染を起こし、根を支えている骨が溶けてしまうばかりか根自体が脆くなりひど
  く劣化していたり…
 ・歯に土台を入れるために根管内を必要以上に太く削ったり、または本来削る場所から反れて削られて
  いることで、もともとの歯質が薄くなったり、ひどい場合は穴が開いていたり(パーフォレーショ
  ン)…
 ・不適切な被せ物、詰め物により歯肉・骨にまで組織破壊が進行していたり…
 ・噛み合わせの調和がとれていない被せ物・詰め物の治療がなされていることで、顎関節や咀嚼筋に悪
  影響を及ぼしていたり…
 ・しっかり治療を終えたにも関わらず、その後の予防を怠けていたり、関心がなかったり…


    と、例を取り上げましたが列挙すれば限りがありません。


修復後の材料の減りや材質の劣化に伴う想定範囲内の再治療は、正直避けては通れないものです。しかし、治療の必要性があっても放置していたり、不十分な予防対策による再治療や不適切治療からの再発・再治療は極力避けたいものです。


再治療はそもそもそんなに簡単にできるものではないということも知っておいて下さい。
もっとも技術を要するのは、前医の不適切な治療により悪化した状態を再治療する場合です。その中で多い治療は不適切な根管治療による様々な病状の発症がもっとも多く、続いて被せ物・詰め物の精度不良によるむし歯の再発でしょう。医療者側が最初からしっかり対応してあれば防げるものばかりですが、残念なことに不適切な処置によりかえって悪化・進行してしまっている場合も多く目にします。


歯科の場合、材質の劣化や消耗に伴う再治療は少なからず必要になります。それ以外の再治療を少しでも減らすには、患者さんは日頃の歯の手入れと食生活の見直し、医療者側は適切で精密な治療を心掛けなければなりません。双方が合致することで、無駄な再発・再治療が少しでも減らせるのではないかと思います。