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新型コロナウイルスとむし歯・歯周病 - vol.100 -

本来ならこの100回目の「私考」に25年歯科医療に携わってきて思うことを掲載しようと思っていましたが、現在新型コロナウイルスが感染拡大しているため、歯科医療者に携わる者としてむし歯・歯周病と関連付けて少し別角度から発信したいと思います。


大学卒業後 丸森 賢二先生のもと勤務医として歯科医療に携わり、その後この地で開院し20年目を迎えました。勤務医時代 師から歯科治療は「治療主体」よりも「予防主体」が大切だと学び、今も当医院では「予防主体」を中心に歯科治療に取り組んでいます。
歯科の場合、予防ができていなければ高確率でむし歯や歯周病が発症します。そしてどんなに精密に高価な材料で治しても、予防できていなかったら再発する傾向が高くなります。よって歯科治療は予防対策がしっかりできていなければ、治療する価値も半減してしまうのです。それほど予防は大切なのです。


新型コロナウイルス対策にも同じようなことが当てはまるような気がします。


新型コロナウイルスの感染を避ける一番の対策は、「3密(密閉・密集・密接)を避け、不要な用事を自粛する」と言われ、人との接触を極力避けることです。むし歯や歯周病対策に照らし合わせると、原因のむし歯菌や歯周病菌を増やさないようにする意味合いと同じで、先ず細菌の餌となる糖分の摂取を控える(自粛する)ことです。
ウイルスと細菌の対策に違いはありますが、ウイルス対策としては、原因のウイルスに感染しない行動 細菌対策としてはもともと口腔内に住んでいるむし歯・歯周病の原因菌を増やさないようにすることです。

そして、手洗い・手指消毒する対応策は、汚れやウイルスを除去するための行為で、むし歯や歯周病予防に照らし合わせると、むし歯菌や歯周病菌を除去するブラッシングに当てはまります。


初期の段階から感染拡大の危機感を訴えている専門家の意見に耳を傾けない政府の対応の悪さや遅さ、そして国民の危機管理能力の低さが感染拡大につながり、今や医療崩壊が始まっています。感染拡大してから更にいろいろな対策法や国民へのお願いが毎日ニュースに流れますが、広がってから抑えるのは大変な時間と労力が必要で、結果的にお金も掛かります。
ある意味平和ボケしている時代ですから「少しぐらいなら…」「ちょっとなら…」の行動、そして感染しても何とか医療者が治してくれると意識の甘さが更なる危機管理能力の低下を招いているように思います。


これはむし歯・歯周病予防にも同じことが言えます。むし歯菌・歯周病菌は皆さんの口腔内には必ず存在しますが、むし歯・歯周病を予防するには、菌をできるだけ増殖させないことと停滞させないよう除去することです。また、「予防している」「予防できている」では意味合いが違い結果も異なりますので、むし歯・歯周病の発症や進行が抑えられている方とその反面発症や悪化そして再発する方の違いは、個々の意識レベルの問題になります。


特殊な病気や体質の方を除き、どこかに落ち度や気の緩みがあるからむし歯や歯周病になり、治療しても再発するのです。
そして進行してから行うむし歯・歯周病治療も時間や労力、そして結果的にお金が掛かるのです。

歯の場合、直接命と関わることは少なく、最悪歯を失えば人工物で補うことができますが、命には変わりはありません。


開業してから常に「糖分摂取制限」と「ブラッシングの重要性」を伝え、実行できない場合は治療に取り掛からなかったり、延期もしくは中止もしてきました。患者さんの中には予防の話をすると、耳が痛く、聞きたくない話も多かったと思いますが、むし歯菌・歯周病菌と新型コロナウイルスとは危険度は違えど、同じようなことが言えると思いませんか。


今回は新型コロナウイルスとむし歯・歯周病の予防対策を関連付けて記載しましたが、やはり医療においてもっとも大切なことは「予防」なのです。


細菌やウイルスは怖い存在ですが、その怖い存在を軽視する人の方が怖いです。