トップページ > 救済治療・再生療法 > 再植法 … > vol.87 症例 7 …


再植法

症例 7 - vol.87 -

33歳 女性



「10数年前に神経除去治療を行い銀歯を被せました。その後何も症状がなかったのですが、3ヶ月前に頬側におできができたため掛かりつけ医を受診しました。根に穴が開いている可能性があり治療しても予後が悪いので、抜歯してインプラントかブリッジを勧められました。抜くのが嫌だったので転院し、そこで根管治療を始めました。治療しておできはなくなったため、4本ある神経の穴の1本だけ根管充填を行い様子を見ることになりました。その後経過が悪いようならマイクロスコープ診療をしている医院で診察してもらったほうがよいとアドバイスされましたが、早めに診ていただきたくて…」と来院されました。




分岐部周囲 近心~遠心根根尖周囲に透過像が認められます。
この透過像の様子から炎症は分岐部の穿孔(矢印)が発端で起こっていると推測できます。
詳細は根管内診査が必要です。









根管内診査
仮詰めのストッピングを除去すると、近心根(近心頬側根・近心舌側根)の2根には最近根管充填された様子が確認できます。
遠心根は再治療された様子はなく3ヵ所に充填物が確認できますが、レントゲン診査と照らし合せ根管の位置から推測すると、矢印赤が穿孔していると思われ遠心頬側部(矢印 黄)にも大きな穿孔が確認できます。矢印黄は患者さんの話と総合して判断すると、どうやら再治療を行ったDrが遠心根に新たに穿孔してしまい、その後遠心根の治療は行わず近心根のみ治療を終え様子を見ることにしたようです。
これでは経過が良くなることはなく、時間の経過とともに更なる症状が発症すると思われます。

患者さんが保存を強く希望されたため、意図的再植法にて対応することにしました。








再植に先立ちExtrusionを行います。








順調に挺出してきました。


 








近心根根尖には嚢胞 分岐部には炎症性組織が多量に存在します。










分岐部の炎症性組織を除去していくと、予想通り分岐部に穿孔が認められました。










拡大観察してみると、穿孔部は1,5mmほどの大きさで遠心根舌側面の歯根膜組織が広範囲に消失しています。


 






遠心頬側部の大きな穿孔は、歯根上部に広範囲に認められたため形態修正しました。(矢印 黄)
分岐部の穿孔部(矢印 赤)
(抜去歯固定器具は当医院オリジナル特注治具  株式会社ジーアクトさん製作)









根管と穿孔部の充填材を除去しました。
穿孔部の充填剤を除去すると、歯根周囲の組織が穿孔部から観察できます。(矢印 赤)









穿孔部にリーマーを挿入すると、分岐部への穿通を認めます。








歯根側から見た穿孔部









拡大してみると、分岐部側面に穿孔を認めます。(矢印 赤)
穿孔部周囲のセメント質は、慢性炎症状態が長かったことでセメント質の添加 肥厚が認められます。


   










穿孔部を確実に封鎖するため、内側と外側から補強を兼ねてSBにて封鎖しました。


 
 









再根管治療 根管充填 穿孔部の封鎖(パーフォレーションリペア) 欠損歯質の再建
デブライドメントを行いました。









再植直後









1ヶ月後









2ヶ月後
透過像内の骨梁が明瞭になってきました。









4ヶ月後








7ヶ月後
ビルドアップ テンポラリーを装着して1ヶ月後
分岐部の骨が緻密になってきました。









1年後
隣接歯 第2小臼歯遠心のコンタクトカリエスをコンポジット充填し、再植歯に最終補綴物を装着しました。
根尖周囲の広範囲に存在した透過像は骨梁で満たされ、分岐部にわずかな透過像が存在します。
今後を見守りたいと思います。








1年6ヶ月後
更に骨が緻密化し安定しています。








2年6ヶ月後








5年8ヶ月後
経過良好です。