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口内法

症例 6 - vol.79 -

46歳 女性



「現在根の治療中ですが噛むと痛みが治まらないため、月1 のペースで通院しています。治療を始めて1年経過しますが症状は変わらず、そのことを主治医に訴えるのですが、根管治療は時間の掛かる治療だから長い期間が必要と言われ、その割にいつも短時間でいつもと同じ治療を繰り返すだけで何も変わりません。このまま今の歯科医院で治療を繰り返していても治らない気がして… また根の治療には歯に盛り足した隔壁が絶対必要と言われたのですが、以前通せていたフロスが通りません。このままでは新たにむし歯ができてしまわないか心配で…」と相談で来院されました。




隔壁を作って根管治療をされていたようですが、ギザギザにレジンを隣接歯に盛りあげた隔壁のため歯磨きができない不衛生な環境です。これでは根管治療を行う以前の問題です。
近心根根尖周囲には硬化性骨炎様の不透過像(囲い)が認められるため、慢性炎症によるものと思われます。

※硬化性骨炎とは、レントゲン写真上で根尖周囲に不透過像が現れる状態です。感染根管などの持続的な炎症性刺激により骨組織に生じる反応で、骨梁の厚みが増すことで不透過像として出現するようです。








根管内診査すると、近心部にむし歯(軟化象牙質)が残っています。
またレントゲンで髄床底部にまで隔壁材料が存在しているように見えるため髄床底部の隔壁を慎重に除去すると穿孔ギリギリの状態です。(髄床底直下に歯周組織が透過して見えます。)









隔壁・近心部の軟化象牙質を完全に除去すると近心根にはイスムスが認められます。(矢印)
また近心頬側根根尖部から排膿 舌側根から出血が確認できます。









遠心舌側根根管内には不良肉芽が確認できます。この周囲で穿孔(パーフォレーション)を起こしている可能性があります。








遠心根根管口に造影目的と消炎処置のため造影剤が入った水酸化カルシウムを注入すると、根管内壁ギリギリまで入り、根管口~歯根中央付近までの根管の太さが確認できます。

近心根にはイスムス+根尖病巣
遠心根は穿孔(パーフォレーション)が主原因と思われます。


 





患歯の遠心部の歯間スペースを確保するため、最後臼歯を仮歯に替え遠心移動しました。
(患歯に負荷が掛かると痛みがあるため最後臼歯を仮歯に替え装置を組込みました。)









遠心舌側根の肉芽組織は消失し、穿孔部(矢印)がカルシウム成分で埋まっていますが、密閉はされていないため、根管治療を兼ね穿孔部のリペアを行います。









根管内をきれいにしました。








穿孔部直下まで根管治療薬を貼薬しました。








穿孔部の組織側に裏打ちを施しました。








広く形成された部分と穿孔部を厚めにMTAセメントで修復しました。








根管治療薬貼薬 穿孔部修復後
近心根(頬側根・舌側根)と遠心根(舌側根)は水酸化カルシウムが根尖より出てしまいました。








1ヶ月後
初診当初からあった圧痛が随分解消されたようですが、まだわずかに感じるようです。








3ヶ月後
全く痛みがなくなったようです。








6ヶ月半後
連結テンポラリーにして2ヶ月
全く問題なく噛めるようです。








10ヶ月後
マイクロスコープ下で確認すると4根ともセメント質様石灰化物で根尖部の閉鎖が確認できたため、SB+コア材にて根管充填&支台築造を行いました。
初診時に存在した近心根尖部の根尖病巣は消失し、周囲の硬化性骨炎様の不透過像も存在しません。また遠心根側面の穿孔部周囲の骨も安定しています。








1年6ヶ月後
最終補綴物を装着しました。