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重症歯周病の処置

症例 5 - vol.96 -

60歳 女性



「3年程前に金属の被せものを入れてもらったのですが、2ヶ月前に激痛で掛かりつけ医に行きました。そこで歯周病で膿が出ていると言われ抜歯を勧められましたが、抜歯が嫌だったので抗生物質を処方してもらい様子を見ることにしました。3日間痛みが続きましたがその後落ち着いたため、再受診すると抜歯して延長ブリッジを勧められました。そして噛み合わせが悪い(開口)ので歯周病になった可能性があると言われ、全顎矯正を勧められたため矯正歯科を受診しました。矯正医の先生は現時点でリスクが大きいので無理にしないほうが良いと言われたため再び掛かりつけ医に相談しました。今度は抜歯しても延長ブリッジはできません 即時インプラントをしましょうと言われました。ずいぶん昔から通院しているのに初めて噛み合わせが悪い(開口)ので今頃全顎矯正を勧められたり、短時間の通院で延長ブリッジができる・できないと話がころころ変わったり、説明や方針が受診するたびに違うため、自分なりに調べ他の先生の意見を聞きたくて…」と来院されました。




患歯(矢印)ですが、近心歯頚部の一部・根尖周囲から遠心部にかけて骨吸収と思われる透過像が確認できます。
膿が出ていると言われてからかなり気を付けて歯磨きをしているようで、現時点で歯磨きでの出血は認められません。
口腔内診査で咬合による動揺(咬合性外傷)が主な原因ではないかと推測し、お話を聞くと、金属の被せものを入れた時から噛むと違和感があり、噛み合わせの調整をお願いしても大丈夫だからと聞き入れてくれないため、ずっと3年間噛んでも痛みが出ないように自分で工夫して歯をずらして噛んでいたそうです。

明らかに早期接触が認められ、根尖周囲の透過像に骨梁も認められることから、まずは主原因と思われる咬合を調整し様子を見ることにしました。








3ヶ月後
今にも抜けそうな動揺から少し治まった感じはありますが、現時点でかなりの動揺があります。








10ヶ月後
咬合調整を繰り返し歯磨き強化をしてきました。レントゲン診査では広範囲に透過像が認められますが、以前より骨梁が認められるようになりました。驚くことにレントゲン写真では想像できないほど動揺が治まり、周囲の歯とほとんど同じくらいの動揺です。患者さん曰く、食事も主にこちら側で食べ、すごく硬いもの以外は何でも普通に噛めるようになったそうです。しかし、これ以上の回復は現時点で見通しがつきません。このまま経過観察するか 一歩先の処置を行うか検討し、隣在歯には根管治療の不備による根尖病巣が認められトータル的な治療を望まれたため、根面の状態の確認・補強・更なる再生を期待して再植治療を行うことにしました。




   





抜歯窩遠心面には多量の炎症性組織(肉芽組織)が認められます。


 








  根尖部に炎症性組織が認められ、遠心面の歯根膜組織が広範囲に消失しています。












根管治療 根管充填 遠心面溝SB充填 デブライドメントを行いました。









再植直後








1ヶ月後








3ヶ月後








6ヶ月半後








11ヶ月後
初診時と比べると、驚きの骨回復が認められます。









2年3ヶ月後









2年5ヶ月後
最終補綴物を装着しました。
初診当時には考えられないほど骨が回復しました。