破折歯の接着再植法
症例 17 - vol.86 -
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60歳 女性
「手前の歯は2年前に歯根破折によって被せものが取れて放置していました。最近隣の歯の一部が割れて被せものが同じく取れましたが、現在通院中の歯科医院でセメントを入れてもらいました。2本とも状態が悪いので早めに抜いてインプラントか5歯ブリッジか入れ歯を勧められました。今のところ痛みもないので抜くのは避けてこのまま放置も考えましたが、放置も心配なのでネットでいろいろ調べ、もしかしたら抜かずにもたせることができるかもと思い…」セカンドオピニオン希望で来院されました。
歯根破折したのが判明し2年間放置している歯(矢印 赤)は放置してある割には骨吸収は認められませんが、最近一部が割れた歯(矢印 黄)の周囲には骨吸収と思われる透過像が確認できます。
インプラント ブリッジ 入れ歯 再植の利点欠点をお伝えしたところ、「今後のことを少し考えてから決めます。」と判断されました。
初診から3ヶ月後
頬側歯肉を押さえると違和感を感じるようになってきたようです。
完全に歯根破折した歯の根尖部透過像が近心部に広がってきています。
抜いて何かを入れる前に再植に賭けてみたいと希望されたため、2歯とも破折歯の外部接着再植法にて対応することにしました。
患者さんの希望により処置は1歯ずつ行うことになりました。
第1小臼歯
外部接着再植法に先立ち、遠心移動させながらExtrusionを行います。
思惑通りの位置に移動しました。
抜歯窩の近心部の嚢胞を掻爬しました。
口蓋側の破折線周囲を中心に炎症性組織が確認できます。
炎症性組織を除去すると、破折線が明確になり歯根膜組織の消失・セメント質の添加も確認できます。
破折内面は汚染されていますが、歯根近遠心面の歯根膜組織はダメージが少ないようです。
汚染内面を極限まで削合し、接着の準備が整いました。
接着修復 根管充填 デブライドメントを行いました。
根尖部の複雑な破折もしっかり接着し、元の状態に再現しました。
再植直後
1ヶ月後
周囲の骨が回復してきました。
2ヶ月後
3ヶ月後
ビルドアップを行いました。
第2小臼歯
第1小臼歯のテンポラリーにwireを組み込み、近心移動させながらExtrusionします。
近心移動は予定通りでしたが、もう一息挺出させたいため…
フックを入れ替えさらにExtrusionします。
挺出してきました。
近心の一部の歯根が剥がれるように破折した模様です。破折片はありません。
根管を観察すると、頬側歯質にクラック(矢印 赤) イスムス(矢印 黄)が存在します。
(抜去歯固定器具は当医院オリジナル特注治具 株式会社ジーアクトさん製作)
近心側に屈曲した根尖部を観察すると、根尖手前2~3mmの位置に炎症を起こしているような組織が存在します。
穿通用ファイルを曲げ探るとファイルが入ります。
炎症性組織を除去すると根尖孔が確認でき、膿が充満しています。(矢印)
洗浄後真横から観察すると、小さな根尖孔が存在し周囲が窪んでいました。(根尖孔 矢印 赤)
根管形成中
かなりの角度で湾曲しています。
根管口のクラックとイスムス処理も行いました。
根管口から根尖部を除いても根尖孔が確認できません。
根管口からかなり角度を変えて覗くとわずかながら根尖孔を確認できますが、急な角度で湾曲しているためしっかり確認できません。
通常の根管治療でこのような根尖孔を発見し、適切に根管治療 根管充填が果たしてできるのか?考えさせられました。
再根管治療 根管充填 逆根管充填 破折歯質再建 デブライドメントを行いました。
再植直後
初診時からレントゲンに写っていた骨頂上の不透過像を再植時に確認したところ、歯質の一部でした。歯根が破折したときに一部の破片が残っていたと思われます。
外科治療中に除去しました。(囲い)
第1小臼歯 4ヶ月半後
第2小臼歯 1ヶ月後
第1小臼歯 5ヶ月半後
第2小臼歯 2ヶ月後
骨が緻密化してきました。
第1小臼歯 7ヶ月半後
第2小臼歯 4ヶ月後
最終補綴物(MB 連結冠) 仮着
第1小臼歯 10ヶ月半後
第2小臼歯 7ヶ月後
最終補綴物(MB 連結冠) 合着
第1小臼歯 1年1ヶ月半後
第2小臼歯 10ヶ月後
「手前の歯は2年前に歯根破折によって被せものが取れて放置していました。最近隣の歯の一部が割れて被せものが同じく取れましたが、現在通院中の歯科医院でセメントを入れてもらいました。2本とも状態が悪いので早めに抜いてインプラントか5歯ブリッジか入れ歯を勧められました。今のところ痛みもないので抜くのは避けてこのまま放置も考えましたが、放置も心配なのでネットでいろいろ調べ、もしかしたら抜かずにもたせることができるかもと思い…」セカンドオピニオン希望で来院されました。
歯根破折したのが判明し2年間放置している歯(矢印 赤)は放置してある割には骨吸収は認められませんが、最近一部が割れた歯(矢印 黄)の周囲には骨吸収と思われる透過像が確認できます。
インプラント ブリッジ 入れ歯 再植の利点欠点をお伝えしたところ、「今後のことを少し考えてから決めます。」と判断されました。
初診から3ヶ月後
頬側歯肉を押さえると違和感を感じるようになってきたようです。
完全に歯根破折した歯の根尖部透過像が近心部に広がってきています。
抜いて何かを入れる前に再植に賭けてみたいと希望されたため、2歯とも破折歯の外部接着再植法にて対応することにしました。
患者さんの希望により処置は1歯ずつ行うことになりました。
第1小臼歯
外部接着再植法に先立ち、遠心移動させながらExtrusionを行います。
思惑通りの位置に移動しました。
抜歯窩の近心部の嚢胞を掻爬しました。
口蓋側の破折線周囲を中心に炎症性組織が確認できます。
炎症性組織を除去すると、破折線が明確になり歯根膜組織の消失・セメント質の添加も確認できます。
破折内面は汚染されていますが、歯根近遠心面の歯根膜組織はダメージが少ないようです。
汚染内面を極限まで削合し、接着の準備が整いました。
接着修復 根管充填 デブライドメントを行いました。
根尖部の複雑な破折もしっかり接着し、元の状態に再現しました。
再植直後
1ヶ月後
周囲の骨が回復してきました。
2ヶ月後
3ヶ月後
ビルドアップを行いました。
第2小臼歯
第1小臼歯のテンポラリーにwireを組み込み、近心移動させながらExtrusionします。
近心移動は予定通りでしたが、もう一息挺出させたいため…
フックを入れ替えさらにExtrusionします。
挺出してきました。
近心の一部の歯根が剥がれるように破折した模様です。破折片はありません。
根管を観察すると、頬側歯質にクラック(矢印 赤) イスムス(矢印 黄)が存在します。
(抜去歯固定器具は当医院オリジナル特注治具 株式会社ジーアクトさん製作)
近心側に屈曲した根尖部を観察すると、根尖手前2~3mmの位置に炎症を起こしているような組織が存在します。
穿通用ファイルを曲げ探るとファイルが入ります。
炎症性組織を除去すると根尖孔が確認でき、膿が充満しています。(矢印)
洗浄後真横から観察すると、小さな根尖孔が存在し周囲が窪んでいました。(根尖孔 矢印 赤)
根管形成中
かなりの角度で湾曲しています。
根管口のクラックとイスムス処理も行いました。
根管口から根尖部を除いても根尖孔が確認できません。
根管口からかなり角度を変えて覗くとわずかながら根尖孔を確認できますが、急な角度で湾曲しているためしっかり確認できません。
通常の根管治療でこのような根尖孔を発見し、適切に根管治療 根管充填が果たしてできるのか?考えさせられました。
再根管治療 根管充填 逆根管充填 破折歯質再建 デブライドメントを行いました。
再植直後
初診時からレントゲンに写っていた骨頂上の不透過像を再植時に確認したところ、歯質の一部でした。歯根が破折したときに一部の破片が残っていたと思われます。
外科治療中に除去しました。(囲い)
第1小臼歯 4ヶ月半後
第2小臼歯 1ヶ月後
第1小臼歯 5ヶ月半後
第2小臼歯 2ヶ月後
骨が緻密化してきました。
第1小臼歯 7ヶ月半後
第2小臼歯 4ヶ月後
最終補綴物(MB 連結冠) 仮着
第1小臼歯 10ヶ月半後
第2小臼歯 7ヶ月後
最終補綴物(MB 連結冠) 合着
第1小臼歯 1年1ヶ月半後
第2小臼歯 10ヶ月後
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