難しい再根管治療
症例 19 - vol.95 -
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37歳 女性
「10年前に全顎矯正中に奥から2番目の歯が痛み根管治療をしました。8年前に奥から3番目の歯の神経が自然壊死していると言われ根管治療をしました。治療後もずっとこの周囲に違和感があり気になっていたので2年前に別の歯科医院で調べてもらいました。病巣が見つからないと言われたのですが、再根管治療をしてセラミックを被せましたが違和感はそのままです。最近になり歯肉が腫れ、おできが時々できてはつぶれる状態を繰り返しています。今のうちにしっかり治しておきたくて…歯医者に相談に行きましたが、どこに行ってもこのまま様子をみるか抜歯を勧められます。どうにかならないか相談したい…」と来院されました。
頬側歯肉にサイナストラクトが2ヶ所確認できます。(矢印 赤 黄)
第2小臼歯の根尖周囲に透過像(囲い 黄)が認められ、根尖よりGPが飛び出ています。
また第2小臼歯遠心部~第1大臼歯近心にかけ透過像(囲い 赤)が認められ、第2小臼歯根尖の透過像と連続しているようです。第2小臼歯の歯根は慢性炎症によりセメント質の添加により肥厚したのでしょうか???
改めて偏心投影にてレントゲン診査を追加しました。
角度によって透過像の見え方が異なります。
補綴物を外してさらに診査することにしました。
患者さんの都合でその後の診査は2ヶ月後になりましたが、その間上顎最後臼歯のメタルアンレーが1ヶ月前に脱離し、2ヶ所のサイナストラクトのうち、小臼歯部に相当する(矢印 黄)サイナストラクトが大きくなってきました。
第1大臼歯の近心頬側根管の根管充填剤を透過像周囲まで除去しましたが、根管内に問題は見つかりません。透過像が根尖に存在せず歯根湾曲部に存在するため、根管内をこれ以上追求せず第1大臼歯部に相当するサイナストラクト(矢印 赤)より造影性のあるGPを挿入しレントゲン撮影してみました。
GPの位置から第1大臼歯近心頬側根湾曲部の透過像と関係していますが、歯根表面に何らかの原因が存在しているかもしれません。
そこで先ず第2小臼歯の再植を行い、その際に第1大臼歯の透過像周囲の病巣掻爬を行い、経過観察しながら第1大臼歯の治療を考えることにしました。
第2小臼歯のExtrusionを行いますが、歯根が遠心部中央から根尖にかけて肥厚しているため通常通りExtrusionしても挺出しづらく、挺出したとしても安全に抜歯することが困難になります。そこで第2小臼歯の遠心部の歯間骨の一部を削合しExtrusionすることにしました。
順調に挺出してきました。
抜歯窩には炎症性組織(不良肉芽)が多量に存在しています。
炎症性組織を掻爬していくと…
奥から排膿(囲い)が認められ、根尖から飛び出していたと思われるGP片(矢印)も出てきました。
レントゲン写真の透過像に相当する遠心部~根尖部の歯根膜組織が広範囲に消失しています。
遠心歯根面の一部にクレーター上の凹凸が存在します。(囲い)
囲い中央に孔(矢印)が存在し、ファイルが入ります。
主根管の根管充填剤(GP)を除去し遠心面の孔からファイルを入れると… 根管内の窪みに残存したGP片からファイルが出てきます。(矢印)
遠心面に存在した側枝と判明しました。
この側枝の存在で骨吸収を起こし、根尖部のエンド不良による骨吸収とつながったと思われますが、こんな位置に側枝があることに驚きました。
再根管治療 根管充填 デブライドメントを行いました。
再植直後
第1大臼歯の近心部も骨吸収を起こし炎症性組織が多量に存在していたため、第2小臼歯の抜歯窩から掻爬しましたが近心歯根面の状態は分かりませんでした。よって第2小臼歯の再植後の経過で第1大臼歯の治療計画を立てます。全体的に骨回復が認められればいいのですが、回復しない場合は近心頬側根の抜根を考えています。
1ヶ月後
3ヶ月後
5ヶ月後
骨回復が認められます。
7ヶ月後
8ヶ月後
ビルドアップ テンポラリーを装着して1ヶ月後
1年後
1年2ヶ月
1年7ヶ月半後
最終補綴物を装着しました。
2年7ヶ月半後
「10年前に全顎矯正中に奥から2番目の歯が痛み根管治療をしました。8年前に奥から3番目の歯の神経が自然壊死していると言われ根管治療をしました。治療後もずっとこの周囲に違和感があり気になっていたので2年前に別の歯科医院で調べてもらいました。病巣が見つからないと言われたのですが、再根管治療をしてセラミックを被せましたが違和感はそのままです。最近になり歯肉が腫れ、おできが時々できてはつぶれる状態を繰り返しています。今のうちにしっかり治しておきたくて…歯医者に相談に行きましたが、どこに行ってもこのまま様子をみるか抜歯を勧められます。どうにかならないか相談したい…」と来院されました。
頬側歯肉にサイナストラクトが2ヶ所確認できます。(矢印 赤 黄)
第2小臼歯の根尖周囲に透過像(囲い 黄)が認められ、根尖よりGPが飛び出ています。
また第2小臼歯遠心部~第1大臼歯近心にかけ透過像(囲い 赤)が認められ、第2小臼歯根尖の透過像と連続しているようです。第2小臼歯の歯根は慢性炎症によりセメント質の添加により肥厚したのでしょうか???
改めて偏心投影にてレントゲン診査を追加しました。
角度によって透過像の見え方が異なります。
補綴物を外してさらに診査することにしました。
患者さんの都合でその後の診査は2ヶ月後になりましたが、その間上顎最後臼歯のメタルアンレーが1ヶ月前に脱離し、2ヶ所のサイナストラクトのうち、小臼歯部に相当する(矢印 黄)サイナストラクトが大きくなってきました。
第1大臼歯の近心頬側根管の根管充填剤を透過像周囲まで除去しましたが、根管内に問題は見つかりません。透過像が根尖に存在せず歯根湾曲部に存在するため、根管内をこれ以上追求せず第1大臼歯部に相当するサイナストラクト(矢印 赤)より造影性のあるGPを挿入しレントゲン撮影してみました。
GPの位置から第1大臼歯近心頬側根湾曲部の透過像と関係していますが、歯根表面に何らかの原因が存在しているかもしれません。
そこで先ず第2小臼歯の再植を行い、その際に第1大臼歯の透過像周囲の病巣掻爬を行い、経過観察しながら第1大臼歯の治療を考えることにしました。
第2小臼歯のExtrusionを行いますが、歯根が遠心部中央から根尖にかけて肥厚しているため通常通りExtrusionしても挺出しづらく、挺出したとしても安全に抜歯することが困難になります。そこで第2小臼歯の遠心部の歯間骨の一部を削合しExtrusionすることにしました。
順調に挺出してきました。
抜歯窩には炎症性組織(不良肉芽)が多量に存在しています。
炎症性組織を掻爬していくと…
奥から排膿(囲い)が認められ、根尖から飛び出していたと思われるGP片(矢印)も出てきました。
レントゲン写真の透過像に相当する遠心部~根尖部の歯根膜組織が広範囲に消失しています。
遠心歯根面の一部にクレーター上の凹凸が存在します。(囲い)
囲い中央に孔(矢印)が存在し、ファイルが入ります。
主根管の根管充填剤(GP)を除去し遠心面の孔からファイルを入れると… 根管内の窪みに残存したGP片からファイルが出てきます。(矢印)
遠心面に存在した側枝と判明しました。
この側枝の存在で骨吸収を起こし、根尖部のエンド不良による骨吸収とつながったと思われますが、こんな位置に側枝があることに驚きました。
再根管治療 根管充填 デブライドメントを行いました。
再植直後
第1大臼歯の近心部も骨吸収を起こし炎症性組織が多量に存在していたため、第2小臼歯の抜歯窩から掻爬しましたが近心歯根面の状態は分かりませんでした。よって第2小臼歯の再植後の経過で第1大臼歯の治療計画を立てます。全体的に骨回復が認められればいいのですが、回復しない場合は近心頬側根の抜根を考えています。
1ヶ月後
3ヶ月後
5ヶ月後
骨回復が認められます。
7ヶ月後
8ヶ月後
ビルドアップ テンポラリーを装着して1ヶ月後
1年後
1年2ヶ月
1年7ヶ月半後
最終補綴物を装着しました。
2年7ヶ月半後
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