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難しい再根管治療

症例 16 - vol.88 -

25歳 女性




「最近3歯まとめて治したのですが、何となく奥歯の奥の方が重い感じがするのと、手前の歯と歯の間に歯間ブラシを入れるとなかなか出し入れができず、いつもたくさん血が出てきます。治してくれた先生に相談したのですが取り合ってくれません。この先心配なので…」と来院されました。




3歯連結のMCrが装着されています。
最後臼歯根尖相当部には透過像(囲い)が認められ、近心根には根管充填剤が認められません。(矢印)


3歯の補綴のやり直しを希望されましたが、まずは最後臼歯の感染根管治療から治療開始します。







連結冠を切断除去し、支台も除去し近心根の根管を穿通用ファイルで探りますが、途中からファイルが挿入しません。レントゲン上では微かに根管が存在しているように見えるのですが… ファイルにプレカーブを与えても何度も探りますが根尖まで到達しません。マイクロスコープで確認すると、根管がカーブする位置に何かを詰めたような形跡があるのですが、場所的にそして充填物が歯質色のためマイクロスコープ下でも詳細が分かりません。
治療前のレントゲンから考察すると、根尖部の透過像は近心根側が広範囲に透過しているため近心根の感染根管治療が特に重要になります。
患者さんと相談し、詳細が確認できない充填物を手探りで少しずつ除去していくか? ファイルが到達したところまで根管治療薬を貼薬して透過像の様子を見るか? 外科処置に切り替えるか? と 提案したところ、以前他医院にて反対側の小臼歯を同じ疾患で抜歯した経緯があるため、今回は確実に治したいと希望されました。根管内の謎の充填物?の存在 過去に再植した樋状根の根管形態・根尖の数々を観察した経験からすると、特に根管が開かない樋状根の場合、再植治療の方が確実に根管にアプローチできるため、再植にて対応することにしました。









抜歯窩の近心よりに炎症性組織が存在します。


 
 







抜去歯の近心根尖部に炎症性組織が認められます。










炎症性組織をめくると…  近心舌側根尖孔が確認できます。(矢印)


 






根尖周囲の歯根膜組織は消失し、近心には2ヶ所 遠心には1ヶ所根尖孔が存在します。(矢印)











根管口から探っても根尖孔に到達しないため、根尖孔から探ります。
(抜去歯固定器具は当医院オリジナル特注治具  株式会社ジーアクトさん製作)










根尖孔(矢印)からアプローチすると… 
遠心根尖直下にはGPが認められました。近心2根には何も存在しません。


 







近心頬側根の根管を探るとコンポジットレジンのようなものが剥がれ、歯根内壁に穿孔が確認できました。前医が根管治療の際、穿孔してしまいその周囲にレジン充填を行ったため、再根管治療をした際ファイルが入らなかったようです。
また根管充填もされていなかった理由も穿孔と関係していると思われます。

 










再根管治療 根管充填 穿孔修復 デブライドメントを行いました。


 







3ヶ所の根尖孔もしっかり封鎖しました。










近心頬側の穿孔部









再植直後
手前の連結冠を除去し仮歯に置き換え患歯を固定しました。









1ヶ月後








2ヶ月後
根尖周囲の透過像が消失してきました。








3ヶ月後
透過像が消失しました。








4ヶ月後
ビルドアップ テンポラリーを装着して1ヶ月後
根尖周囲の透過像は消失し、調子がいいようです。




当医院の治療はここまで