難しい再根管治療
症例 15 - vol.85 -
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35歳 女性
「第1大臼歯を10年ほど前に抜髄し、根管治療に1年掛かりました。そして今から1年3ヶ月前に頬側におできができたため、根管の再治療を1~2週間に1回のペースで回数にして20回以上 1年以上通院しましたが、痛みが治まらないので転院しました。転院先の先生に痛みがあったため仮歯を外してもらい以前より楽にはなったのですが、こじれた根管治療は難しく自信がないので、こちらを紹介して頂きました。第2大臼歯にも根尖病巣があると言われましたが、両方とも治りますか?」と相談で来院されました。
第1大臼歯の近心根根尖に小さい透過像が認められます。
第2大臼歯の根尖には大きな透過像が認められます。
咬合関係は第2大臼歯のみ下顎と咬合し、前歯~小臼歯にかけてバーティカルストップがありません。咬合によって第2大臼歯の状態を更に悪化させている可能性があります。
第2大臼歯の根尖病巣のほうが大きいのですが症状はないようです。
第1大臼歯
根管内診査
仮封剤を除去すると、頬側根2根には水酸化カルシウムが貼薬されているようです。原因根の頬側近心根の水酸化カルシウムを除去していくと間もなくGPが出てきました。GP上に水酸化カルシウムを置いたようですが、前医が何をしたかったのか不明です。
頬側近心根のGPを除去していくと、根管内内壁に入りこんだGPが除去できません。
根管内内壁にクラックがあり、そのクラックに入り込んだGP(矢印)が除去できない状況です。
レントゲンで確認すると、湾曲する手前までのGPは除去できたようですが、クラックが根管口付近で認められたため、根尖方向の診査をこのまま進めるとトラブルを招きかねないため、患者さんに事情を説明し、根尖病巣も存在し過去に何度も根管治療を繰り返しクラックも認められたため、今後の治療法は確実な処置を行う目的で外科的歯内療法にて治療することにしました。
大臼歯が近接しているため、第2大臼歯を遠心移動してから行う計画を立てましたが、諸事情により根管内診査より4ヶ月ほど経過し、その間第1大臼歯の症状が気になりだしたため、現状のままExtrusionを始めました。
また第2小臼歯咬合面にコンポジット充填にて一時的なバーティカルストップを設け、咬合関係に配慮しました。
順調に挺出してきました。
抜去歯を観察すると、レントゲン上の根尖病巣に相当する頬側近心根根尖に炎症性組織(不良肉芽)が認められます。
病巣の組織を除去していくと根尖孔から飛び出たGPが認められ、これが根尖病巣の原因と思われます。
根尖孔から慎重に根尖孔の拡大を行います。
病巣のあった根尖孔周囲は歯根吸収とセメント質の添加が認められました。
3根とも根管充填を終え、頬側近心根の根尖周囲のデブライドメントを行う際、歯根側面に新たに歯根吸収(矢印)が見つかり、吸収窩に組織が入り込んでいました。
吸収窩の処置を行いSBにて再建しました。
再根管治療 根管充填 クラックの処置 デブライドメントを行いました。
再植直後
1ヶ月後
治療前は長い間痛みがあって苦痛だったそうですが、術後には嘘のように快適になったと報告してくれました。
2ヶ月半後
骨の回復が認められます。
5ヶ月後(清掃性を考慮し、モジュールにて遠心移動し固定)
近心頬側根根尖周囲の透過像は消失し、骨の回復が認められます。
第1大臼歯が落ち着いたため第2大臼歯の処置に移ります。
第2大臼歯
抜歯窩底部には炎症性組織が充満しています。
炎症性組織を除去します。
炎症性組織を除去しました。
頬側遠心根と口蓋根は根尖より根管充填剤が突出しています。
根管治療不十分な頬側近心根の根尖周囲に嚢胞が認められます
頬側近心根の根尖周囲の嚢胞を除去すると… わずかに歯根吸収も認められます。
嚢胞付近には頬側近心根の根尖(矢印)が確認できます。
根尖周囲の嚢胞は、不十分な頬側近心根の根管治療と頬側遠心根と口蓋根の根管充填剤のオーバー治療の双方がもたらしているようです。
根管充填剤を除去していきますが、垂直加圧法のためか?密に詰まっていないのか? 容易に除去できました。
(抜去歯固定器具は当医院オリジナル特注治具 株式会社ジーアクトさん製作)
根管口と根尖孔から根管治療&洗浄を行いました。
3根の根尖孔から根管治療用器具(リーマー)が穿通したのを確認します。
3根管とも根管充填の準備が整いました。
再根管治療 根管充填 デブライドメントを行いました。
3根尖とも塞ぎ、吸収部位も滑沢にしました。
再植直後
清掃性を考慮し歯冠空隙を確保し、また同側の鼻腔の調子が悪いと患者さんからお聞きしたため、今後の影響を考慮し上顎洞底線より手前で固定しました。
第1大臼歯は6ヶ月半経過
透過像は消失し骨が回復しています。
1ヶ月半後(第2大臼歯)
8ヶ月後 (第1大臼歯)
3ヶ月後 (第2大臼歯)
10ヶ月後 (第1大臼歯)
第2大臼歯の透過像が縮小しました。
4ヶ月後 (第2大臼歯)
11ヶ月後 (第1大臼歯)
第2大臼歯 ビルドアップ 連結テンポラリー装着
5ヶ月後 (第2大臼歯)
12ヶ月後 (第1大臼歯)
第2大臼歯 ビルドアップ 連結テンポラリー装着1ヶ月後
調子良く噛めるようです。
当医院での治療はここまで
「第1大臼歯を10年ほど前に抜髄し、根管治療に1年掛かりました。そして今から1年3ヶ月前に頬側におできができたため、根管の再治療を1~2週間に1回のペースで回数にして20回以上 1年以上通院しましたが、痛みが治まらないので転院しました。転院先の先生に痛みがあったため仮歯を外してもらい以前より楽にはなったのですが、こじれた根管治療は難しく自信がないので、こちらを紹介して頂きました。第2大臼歯にも根尖病巣があると言われましたが、両方とも治りますか?」と相談で来院されました。
第1大臼歯の近心根根尖に小さい透過像が認められます。
第2大臼歯の根尖には大きな透過像が認められます。
咬合関係は第2大臼歯のみ下顎と咬合し、前歯~小臼歯にかけてバーティカルストップがありません。咬合によって第2大臼歯の状態を更に悪化させている可能性があります。
第2大臼歯の根尖病巣のほうが大きいのですが症状はないようです。
第1大臼歯
根管内診査
仮封剤を除去すると、頬側根2根には水酸化カルシウムが貼薬されているようです。原因根の頬側近心根の水酸化カルシウムを除去していくと間もなくGPが出てきました。GP上に水酸化カルシウムを置いたようですが、前医が何をしたかったのか不明です。
頬側近心根のGPを除去していくと、根管内内壁に入りこんだGPが除去できません。
根管内内壁にクラックがあり、そのクラックに入り込んだGP(矢印)が除去できない状況です。
レントゲンで確認すると、湾曲する手前までのGPは除去できたようですが、クラックが根管口付近で認められたため、根尖方向の診査をこのまま進めるとトラブルを招きかねないため、患者さんに事情を説明し、根尖病巣も存在し過去に何度も根管治療を繰り返しクラックも認められたため、今後の治療法は確実な処置を行う目的で外科的歯内療法にて治療することにしました。
大臼歯が近接しているため、第2大臼歯を遠心移動してから行う計画を立てましたが、諸事情により根管内診査より4ヶ月ほど経過し、その間第1大臼歯の症状が気になりだしたため、現状のままExtrusionを始めました。
また第2小臼歯咬合面にコンポジット充填にて一時的なバーティカルストップを設け、咬合関係に配慮しました。
順調に挺出してきました。
抜去歯を観察すると、レントゲン上の根尖病巣に相当する頬側近心根根尖に炎症性組織(不良肉芽)が認められます。
病巣の組織を除去していくと根尖孔から飛び出たGPが認められ、これが根尖病巣の原因と思われます。
根尖孔から慎重に根尖孔の拡大を行います。
病巣のあった根尖孔周囲は歯根吸収とセメント質の添加が認められました。
3根とも根管充填を終え、頬側近心根の根尖周囲のデブライドメントを行う際、歯根側面に新たに歯根吸収(矢印)が見つかり、吸収窩に組織が入り込んでいました。
吸収窩の処置を行いSBにて再建しました。
再根管治療 根管充填 クラックの処置 デブライドメントを行いました。
再植直後
1ヶ月後
治療前は長い間痛みがあって苦痛だったそうですが、術後には嘘のように快適になったと報告してくれました。
2ヶ月半後
骨の回復が認められます。
5ヶ月後(清掃性を考慮し、モジュールにて遠心移動し固定)
近心頬側根根尖周囲の透過像は消失し、骨の回復が認められます。
第1大臼歯が落ち着いたため第2大臼歯の処置に移ります。
第2大臼歯
抜歯窩底部には炎症性組織が充満しています。
炎症性組織を除去します。
炎症性組織を除去しました。
頬側遠心根と口蓋根は根尖より根管充填剤が突出しています。
根管治療不十分な頬側近心根の根尖周囲に嚢胞が認められます
頬側近心根の根尖周囲の嚢胞を除去すると… わずかに歯根吸収も認められます。
嚢胞付近には頬側近心根の根尖(矢印)が確認できます。
根尖周囲の嚢胞は、不十分な頬側近心根の根管治療と頬側遠心根と口蓋根の根管充填剤のオーバー治療の双方がもたらしているようです。
根管充填剤を除去していきますが、垂直加圧法のためか?密に詰まっていないのか? 容易に除去できました。
(抜去歯固定器具は当医院オリジナル特注治具 株式会社ジーアクトさん製作)
根管口と根尖孔から根管治療&洗浄を行いました。
3根の根尖孔から根管治療用器具(リーマー)が穿通したのを確認します。
3根管とも根管充填の準備が整いました。
再根管治療 根管充填 デブライドメントを行いました。
3根尖とも塞ぎ、吸収部位も滑沢にしました。
再植直後
清掃性を考慮し歯冠空隙を確保し、また同側の鼻腔の調子が悪いと患者さんからお聞きしたため、今後の影響を考慮し上顎洞底線より手前で固定しました。
第1大臼歯は6ヶ月半経過
透過像は消失し骨が回復しています。
1ヶ月半後(第2大臼歯)
8ヶ月後 (第1大臼歯)
3ヶ月後 (第2大臼歯)
10ヶ月後 (第1大臼歯)
第2大臼歯の透過像が縮小しました。
4ヶ月後 (第2大臼歯)
11ヶ月後 (第1大臼歯)
第2大臼歯 ビルドアップ 連結テンポラリー装着
5ヶ月後 (第2大臼歯)
12ヶ月後 (第1大臼歯)
第2大臼歯 ビルドアップ 連結テンポラリー装着1ヶ月後
調子良く噛めるようです。
当医院での治療はここまで
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