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難しい再根管治療

症例 14 - vol.81 -

41歳 女性



「1ヶ月前の夜中に歯の激痛で目が覚めました。その後痛みで朝まで眠れず、すぐに掛かりつけ医に受診しました。歯根嚢胞と診断され、被せ物を外して鎮痛剤を処方され3日程で痛みは治まりました。その後処置中 歯根破折があると診断され抜歯を勧められました。しかし抜歯に抵抗があったためネットで調べて○○先生に相談したところ、舩坂先生を紹介されました。」と来院されました。




根尖に透過像が認められます。
根管口~歯根中央にかけて根管壁が薄いようです。特に近心側が薄く、支台築造の際に太く形成したか、支台除去の際に歯質を削り過ぎたか現時点ではわかりません。
(テンポラリーが装着されています)








根管内診査
テンポラリーが合着用のセメントで装着されてあり、分割削合しなければ除去できない状態でした。不適合なテンポラリーと合着用セメントのはみ出しにより近遠心の歯肉には発赤腫脹が認められます。
根管内に充填されてあったセメントを除去すると、根管が広範囲に形成されてあるのが確認できます。
前医で補綴物を除去するのに2回受診し、歯根破折を調べるためにかなりの時間削っていたとの情報から、除去時に多くの歯質を削合したため歯質が薄くなったと思われます。
そしてテンポラリーも抜歯前提で合着用セメントを使って付けたと推測できます。
近心側の歯質は穿孔ギリギリの状態でかなり薄く、クラックと断定はできませんが怪しげな状態です。
根管治療を兼ね、より確実な処置をするため意図的再植法にて対応することにしました。








再植に先立ち、Extrusionを行います。








順調に挺出してきました。








抜歯窩から炎症性組織(歯根嚢胞)を除去 掻把します。











炎症性組織(歯根嚢胞)と接していた歯根膜組織は消失しています。
近心面の根中央部に貼薬した水酸化カルシウム製剤が透けて見える状態です。歯質が薄そうです。


 







前医で歯根破折と診断されたようですが、マイクロスコープ強拡大で頬側根管内にわずかなマイクロクラックが認められただけでした。歯根破折は認められず頬側根管と舌側根管の間にイスムスが認められたため、これを歯根破折と診断されたのかもしれません。
また根尖周囲は慢性的な炎症の影響からか?歯根吸収を起こしていました。

再根管治療 根管充填 歯根端切除 逆根管充填 クラック処理 歯質補強 デブライドメントを行いました。







再植直後








1ヶ月後
根尖周囲の透過像が縮小してきているのが確認できます。








2ヶ月後
骨の回復が確認できます。








3ヶ月後
ビルドアップ  テンポラリー装着








4ヶ月後








1年2ヶ月後
透過像は完全に消失しました。








1年8ヶ月後
最終補綴物を装着しました。
遠方からの通院大変だったと思いますが… 期待に応えられ良かったです。