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難しい再根管治療

症例 10 - vol.65 -

51歳 男性




「内側の歯肉が2週間前から腫れ、一時おできのようなものができました。現在おできはありませんが、硬いフランスパンなどを噛むと痛みがあります。ここ最近あまり調子が良くないので診てください。」と来院されました。



根管治療が不十分な状態で、近心根 ~ 分岐部にかけて透過像が認められます。
感染根管治療を前提に補綴物を除去することになりました。








MCr 支台を除去すると、遠心根の髄床底に穿孔(矢印)が認められました。








近心根には、頬側 ~ 舌側にまたいでクラック(矢印)が認められました。








穿孔とクラックが透過像とどのような関係性があるか確認するため、まず遠心根の穿孔部をMTA(矢印)で塞ぎました。これで少し時間をおいて透過像の診査をすることにしました。







2ヶ月
経過観察のためテンポラリーを外し、根管内診査するとMTAで塞いだ部分は問題ありませんでしたが、髄床底に置いた綿球には近心根のクラックに触れている周囲に多くの血膿が付着していました。
穿孔部とは別にクラックも感染の原因と思われます。

患者さんからできるだけ歯を保存したいと強く希望されたため、再植にて対応することにしました。







再植に先立ちExtrusionを行います。








順調に挺出してきました。





一塊での抜歯を試みましたが、根の張り具合と歯根膜へのダメージを避けるため、分割抜去に切り替えました。
 





クラックが認められた近心根の根管周囲には黒褐色に汚染されています。



 






遠心根は頬側根と舌側根とも根尖の歯根膜組織が消失しています。








近心根のクラックの状態を診査します。









頬側根管と舌側根管にまたがるイスムスとは明らかに異なる割れ目(矢印)に汚染物が入り込んでいます。








汚染物を除去しクラック(矢印)を観察します。
根管入口では舌側歯根表面付近まで及ぶクラックが認められましたが、根管中央ではクラックが根管内におさまっていました。









遠心根2根の再根管治療を行ないます。
根管充填剤を除去し洗浄していきますが、2根とも根尖までファイルが到達しません。








頬側根は根尖孔から根管を探りますが0,5mm程しかファイルが入りません。







舌側根の根尖孔も1mm弱しかファイルが入りませんが、膿のような汚染物質が根尖孔から出てきます。




 





近心根は根管治療とクラックの修復を行いました。


 








遠心根は根管治療 穿孔部の補強を行いました。









遠心根は根尖孔からファイルが穿通しなかったため、MIバーにて形成後 根管治療を行ない根管充填 逆根管充填を行ないました。









遠心舌側根の近心部に存在した側枝と処置後(矢印)




 





遠心頬側根の遠心隅角部に存在した側枝と処置後(矢印)

根管治療の不備及び側枝の存在が根尖周囲の歯根膜組織に大きなダメージを与えたようです。








再植直後
生着を待って分岐部の処置に移ります。







1ヶ月後
腫れ 痛みもなく快適のようです。







2ヶ月後







2ヶ月半後
分岐部を離開するため、遠心根は固定しながらMTM(近心根近心移動)を開始します。







6ヶ月後
近心根を少し近心に移動し、しばらく固定
近遠心根根尖周囲から分岐部の透過像が消失してきました。







1年後
連結冠を装着しました。
根尖部 ~ 分岐部の透過像は消失しています。







2年後
安定しています。







3年後
経過良好です。