トップページ > 救済治療・再生療法 > 難しい再根管治療 … > vol.27 症例 1 …


難しい再根管治療

症例 1 - vol.27 -

29歳 男性



「歯科健診に行った際、小さなむし歯があるので治療したほうがいいです。」と勧められたため、治療を行ったそうです。治療後からずっと痛みが治まらないため、問い合わせをしたところ、「そのうち治るから様子を見ていてください。」と言われました。1ヵ月経っても一向に治る気配がないため、知人の紹介で当医院に来院されました。





咬合面にレジン充填による治療を認めましたが、患歯の頬側近心部にむし歯らしき着色が歯質を透過して見えます。
レントゲンを見るとレジン充填下にむし歯様の透過像を認め、症状から歯髄炎を疑いました。







レジン充填を除去していくと、広範囲のむし歯が残っています。むし歯の取り残しの上に直接レジン充填を行ったことで、歯髄に更なるダメージを与え、痛みの症状が発症したと推測できます。
痛みが強いため、抜髄根管治療を行うことにしました。








抜髄後水酸化カルシウムを貼薬しました。痛みも治まり快適になったようです。








その後少し来院が途絶え、4ヵ月後に来院されました。
「最近噛むと少しおおぼったい」と訴えられたためレントゲン撮影すると、遠心根の水酸化カルシウムの一部が消失し、根尖に透過像が現れています。
この時点では処置を行わず、少し経過観察をしてみることにしました。







更に2ヵ月後「おおぼったさが少し増してきた」と来院されました。
水酸化カルシウムもさらに消失し、根尖の透過像も広がってきました。
この時点で根管内を観察すると、肉芽組織が根管内にまで入り込み多量に出血・排膿が認められました。
根管内の肉芽組織を除去し、根管内洗浄後 水酸化カルシウムにて貼薬をしましたが、症状が少し軽くなる程度であまり著明な回復が望めないため再植治療で対応することにしました。







抜歯した歯を観察すると遠心根根尖内側の歯根膜にダメージがあるようです。








根管上部から根尖を覗くと、近心根根尖(2根管)より遠心根根尖(1根管)が著しく開いています。
画像には写っていませんが、遠心根根管内遠心側に内部吸収が認められました。








抜髄処置の際、遠心根の根尖より2mm手前に根管内にくぼみがありましたが、内部吸収を起こしていたようです。(水酸化カルシウムが内部吸収している箇所に入り込んでいます。)







根尖部から観察してみます。
遠心根根尖は大きく開いていますが、炎症により根尖も吸収してきています。







逆根管充填と吸収部の補填を行いました。

直接的な原因は解明できませんが、成人になってから下顎前突の下顎枝矢状分割術と短期間で全顎矯正を行なった経歴も何かしら影響を与えたのかもしれません。







再植直後







1ヶ月後
透過像が薄くなってきました。







2ヶ月後
分岐部周囲の歯槽硬線が認められるようになりました。







3ヶ月後 ビルドアップ時







テンポラリー装着後 2週間後
骨が少しずつ緻密化してきました。







テンポラリー装着後 1ヶ月半後
益々骨が緻密化してきました。







テンポラリー装着後 2ヶ月半後







再植後7ヶ月半後  
補綴物装着







補綴物装着1ヶ月後
調子が良いそうです。







再植1年1ヶ月後