難しい再根管治療
症例 22 - vol.107 -
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47歳 女性
「転勤先で伺った歯科医院でレントゲンを撮ったら、上の奥歯2歯に病巣があるため再治療が必要と言われ感染根管治療を受けました。そこでは以前の治療で神経が取りきれていなかったので根の先に病巣ができたと言われ、何度も根管治療を繰り返しました。しかし何度治療を繰り返しても咬合痛が治まらなかったのですが根管充填され、担当医は大丈夫と言うだけで、その後コアの印象まで採りましたが入れるのが怖いため通院をやめました。先日セカンドオピニオンで受診した先生に手前の歯の一部はとても薄く、奥の歯は2根管の根管充填剤を除去しましたが、穿孔が存在するので、2歯とも抜歯しインプラントかブリッジを勧められました。抜歯が嫌だったのでいろいろネットで検索し、先生のHPを見つけました。何とか歯を保存したいのですが…」と来院されました。
患歯2歯は第2小臼歯と第1大臼歯です。
第2小臼歯の仮封剤 第1大臼歯に詰められてあった綿を除去して観察すると…
第2小臼歯には根管内に肉芽組織(矢印 黄)が入り込み排膿(囲い 赤)が認めら、第1大臼歯の口蓋根管内にも排膿が認められます。(矢印 赤)
レントゲン診査すると…
第2小臼歯の根尖に透過像(囲い 赤)が認められ、近心の上部の歯質が薄そうです。
第1大臼歯の3根の根尖に透過像が認められます。近心頬側根(囲い 緑) 遠心頬側根(囲い 青) 口蓋根(囲い 黄)
近心頬側根にはリーマー・ファイル片が存在します。(矢印 赤)
分岐部にも透過像が認められるため、穿孔も疑われます。(囲い 橙)
隔壁を作りラバーダムをして感染根管治療を受けたそうですが、あまりにお粗末な状況で、症状も治まらない状態でコアを装着しようとすることが信じ難いです。
保存するにはかなり厳しい状態ですが、患者さんから抜歯の前にできるだけの治療を受けたいと強く希望されたため、引き受けることにしました。
第2小臼歯
第2小臼歯から再植に先立ち、Extrusionを行います。
順調に挺出しました。
抜歯窩底には多量の水酸化カルシウム製剤と思われる貼薬剤が存在し、掻爬しました。
根尖よりGPがはみ出しており、炎症により根尖周囲の歯根膜組織が消失しています。
再根管治療 根管充填 欠損歯質再建 デブライドメントを行いました。
再植直後
1ヶ月後
3ヶ月後
根尖部の透過像が消失してきました。
第1大臼歯
第2小臼歯 ビルドアップして1ヶ月後
第1大臼歯を再植に先立ち、Extrusionを行います。
順調に挺出しました。
分岐部と口蓋根根尖部に多量の炎症性組織が確認できます。
近心頬側根にはリーマー・ファイル片(矢印 赤)が存在し、隣接するように穿孔(矢印 黄)も確認できます。
穿孔部を歯根側から見ると広範囲に歯根吸収も確認できます。(囲い 黄)
(抜去歯固定器具は当医院オリジナル特注治具 株式会社ジーアクトさん製作)
頬側遠心根(矢印)
口蓋根(矢印)
かなり根尖孔が太く形成されています。
修復前の頬側近心根(矢印 赤)
修復前の穿孔部(囲い 黄)
再根管治療 根管充填 歯根端切除 逆根管充填 穿孔修復 デブライドメントを行いました。
逆根管充填と穿孔修復部(矢印 黄)
再植直後
1ヶ月半後
3ヶ月後
4ヶ月後
6ヶ月後
ビルドアップ テンポラリーを装着して1ヶ月後
8ヶ月後
第2小臼歯 1年3ヶ月後
第1大臼歯 10ヶ月後
最終補綴物(連結冠)を装着しました。
第2小臼歯 1年4ヶ月後
第1大臼歯 11ヶ月後
第2小臼歯 2年後
第1大臼歯 1年7ヶ月後
第1大臼歯の分岐部~頬側近心根にかけて、もともと骨吸収もあり、穿孔部が広く、歯根膜組織の消失が広範囲だったためか、歯根吸収しているようにも見えます。他の部位と比べ顕著な骨回復が確認できずにいましたが、再植11ヶ月が経過した頃から透過像がはっきり出現し、骨吸収も確認できるため、残念ですが他に影響する前に抜根することにしました。
第1大臼歯頬側近心根 抜根2ヶ月後
第2小臼歯 2年3ヶ月後
第1大臼歯 1年10ヶ月後
第2小臼歯 2年11ヶ月後
第1大臼歯 2年6ヶ月後
経過良好です。
「転勤先で伺った歯科医院でレントゲンを撮ったら、上の奥歯2歯に病巣があるため再治療が必要と言われ感染根管治療を受けました。そこでは以前の治療で神経が取りきれていなかったので根の先に病巣ができたと言われ、何度も根管治療を繰り返しました。しかし何度治療を繰り返しても咬合痛が治まらなかったのですが根管充填され、担当医は大丈夫と言うだけで、その後コアの印象まで採りましたが入れるのが怖いため通院をやめました。先日セカンドオピニオンで受診した先生に手前の歯の一部はとても薄く、奥の歯は2根管の根管充填剤を除去しましたが、穿孔が存在するので、2歯とも抜歯しインプラントかブリッジを勧められました。抜歯が嫌だったのでいろいろネットで検索し、先生のHPを見つけました。何とか歯を保存したいのですが…」と来院されました。
患歯2歯は第2小臼歯と第1大臼歯です。
第2小臼歯の仮封剤 第1大臼歯に詰められてあった綿を除去して観察すると…
第2小臼歯には根管内に肉芽組織(矢印 黄)が入り込み排膿(囲い 赤)が認めら、第1大臼歯の口蓋根管内にも排膿が認められます。(矢印 赤)
レントゲン診査すると…
第2小臼歯の根尖に透過像(囲い 赤)が認められ、近心の上部の歯質が薄そうです。
第1大臼歯の3根の根尖に透過像が認められます。近心頬側根(囲い 緑) 遠心頬側根(囲い 青) 口蓋根(囲い 黄)
近心頬側根にはリーマー・ファイル片が存在します。(矢印 赤)
分岐部にも透過像が認められるため、穿孔も疑われます。(囲い 橙)
隔壁を作りラバーダムをして感染根管治療を受けたそうですが、あまりにお粗末な状況で、症状も治まらない状態でコアを装着しようとすることが信じ難いです。
保存するにはかなり厳しい状態ですが、患者さんから抜歯の前にできるだけの治療を受けたいと強く希望されたため、引き受けることにしました。
第2小臼歯
第2小臼歯から再植に先立ち、Extrusionを行います。
順調に挺出しました。
抜歯窩底には多量の水酸化カルシウム製剤と思われる貼薬剤が存在し、掻爬しました。
根尖よりGPがはみ出しており、炎症により根尖周囲の歯根膜組織が消失しています。
再根管治療 根管充填 欠損歯質再建 デブライドメントを行いました。
再植直後
1ヶ月後
3ヶ月後
根尖部の透過像が消失してきました。
第1大臼歯
第2小臼歯 ビルドアップして1ヶ月後
第1大臼歯を再植に先立ち、Extrusionを行います。
順調に挺出しました。
分岐部と口蓋根根尖部に多量の炎症性組織が確認できます。
近心頬側根にはリーマー・ファイル片(矢印 赤)が存在し、隣接するように穿孔(矢印 黄)も確認できます。
穿孔部を歯根側から見ると広範囲に歯根吸収も確認できます。(囲い 黄)
(抜去歯固定器具は当医院オリジナル特注治具 株式会社ジーアクトさん製作)
頬側遠心根(矢印)
口蓋根(矢印)
かなり根尖孔が太く形成されています。
修復前の頬側近心根(矢印 赤)
修復前の穿孔部(囲い 黄)
再根管治療 根管充填 歯根端切除 逆根管充填 穿孔修復 デブライドメントを行いました。
逆根管充填と穿孔修復部(矢印 黄)
再植直後
1ヶ月半後
3ヶ月後
4ヶ月後
6ヶ月後
ビルドアップ テンポラリーを装着して1ヶ月後
8ヶ月後
第2小臼歯 1年3ヶ月後
第1大臼歯 10ヶ月後
最終補綴物(連結冠)を装着しました。
第2小臼歯 1年4ヶ月後
第1大臼歯 11ヶ月後
第2小臼歯 2年後
第1大臼歯 1年7ヶ月後
第1大臼歯の分岐部~頬側近心根にかけて、もともと骨吸収もあり、穿孔部が広く、歯根膜組織の消失が広範囲だったためか、歯根吸収しているようにも見えます。他の部位と比べ顕著な骨回復が確認できずにいましたが、再植11ヶ月が経過した頃から透過像がはっきり出現し、骨吸収も確認できるため、残念ですが他に影響する前に抜根することにしました。
第1大臼歯頬側近心根 抜根2ヶ月後
第2小臼歯 2年3ヶ月後
第1大臼歯 1年10ヶ月後
第2小臼歯 2年11ヶ月後
第1大臼歯 2年6ヶ月後
経過良好です。
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