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歯の挺出(Extrusion)

症例 7 - vol.83 -

50歳 女性  (外科的挺出)



「被せた歯が何となくグラグラする。」と来院されました。




10年前に当医院にて装着した補綴物ですが、診査すると簡単にポストごとMCrが脱離し内面がむし歯になっていました。








かなり広範囲に深いところまでむし歯が認められます。







今から遡ること13年前
「噛むと鈍痛があり頬側歯肉が腫れたため近所の歯科医院を受診すると、歯が脆くなっているから抜歯を勧められましたがまだ抜きたくありません。」と来院されたときのレントゲン写真です。
近心の骨が骨吸収を起こし、歯根膜腔の拡大も認められ、近心から遠心にかけてむし歯も認められました。


 

 






補綴物を除去し自然挺出法で経過観察すると、骨の回復が見られたため再根管治療とプロビジョナルレストレーションにて様子をみて3年後に補綴物を装着しました。
当時かなり脆弱し何かと問題があった樋状根でしたが、できるだけ保存を試みた結果10年間問題なく経過していました。
今回補綴物が脱離し残存歯を診査すると、むし歯の状態が深く広範囲なため保存治療を行うか迷いましたが、レントゲン診査で周囲の骨には影響がなく、歯根膜組織は健全と判断しました。そして確実な歯肉縁下カリエスの除去と外科的挺出にて保存を試みるため、意図的再植法にて対応することにしました。







かなり脆弱した患歯を将来的に患歯単独での保存に不安が残ることから、隣在歯と連結保存する計画を立てました。隣在歯をテンポラリーに替えExtrusionを開始しました。


 







Extrusionにより増殖した組織も認められますが、歯根膜組織は残っています。
また根面色も思っていたよりきれいなため、慎重にむし歯を除去すれば保存可能でしょう。









矯正用フックを除去しむし歯を削合していきます。
(抜去歯固定器具は当医院オリジナル特注治具  株式会社ジーアクトさん製作)





 





樋状根の分岐部周囲(矢印)がとても汚れています。








低速で慎重にむし歯をさらに削合していきます。









舌側分岐部にクラック(矢印)が認められます。
舌側分岐部の汚れと内面のむし歯の主原因は、このクラックが何らなの影響を与えていたのかもしれません。








分岐部側からクラックの処理をしていきます。


 






むし歯を完全に除去しました。
上部はかなり薄い歯質になりましたが、一層硬い歯質が残存しているため温存しました。


 








根管充填 クラック修復 欠損部歯質再建 デブライドメントを行いました。








再植直後
歯質を歯肉縁上に設定し固定しました。








1ヶ月後








2ヶ月後








3ヶ月後








4ヶ月後







6ヶ月後
ビルドアップ テンポラリーを装着して1ヶ月後







8ヶ月後
最終補綴物(連結冠)を装着しました。








1年9ヶ月後
良好です。