トップページ > 私考 > vol.98 治療の優先順位 …


治療の優先順位 - vol.98 -

急を要しない場合、患者さんの思いとは違う治療から始めることが多くあります。


ご希望の治療をすぐに始めたくても、場合によっては先に行なわなければならない治療もあることを知っておいて下さい。


例えるなら…

むし歯が見つかり周囲にプラーク(歯垢)が多く付着しているような場合、すぐに治療してもその時は治りますが、また再発する傾向は高くなります。なぜでしょう?
むし歯はプラークが主で発症します。プラークが常に付着しているような部位の治療を完璧にこなしても、その後汚れが付いているような環境では、早かれ遅かれ再発する確率は高いと言えます。よってむし歯ができた原因を先ず見直し排除する予防治療を行い、その後むし歯治療を行う方が長い目で見た場合治療価値が上がります。
治療が終わってから歯磨き練習すればいいのでは… と思われるかもしれませんが、治療前に行う歯磨き指導には再発防止効果だけでなく、治療自体にも影響するのです。プラークが歯に付着していれば歯肉にも炎症を起こしている場合がほとんどです。歯肉に炎症を起こしていれば、詰め物(充填)はもちろん削って型採り(形成印象)も高精度ではできませんので出来上がりの質も低下します。よって環境が整っていない状態で治療をスタートすれば、精度や質の悪い治療になり、そして再発の確立が高い環境で治療が終わってしまいます。
そのため、治療前の歯磨き予防の見直しは重要なのです。
また歯磨きだけでは歯肉が改善しないことがあります。それは飲食です 糖分摂取の多い方 間食する方 食事時間がバラバラなど 飲食によって口腔内環境も変わります。



噛み合わせ治療を希望され、歯を削ってすぐに治してほしいと言われる場合があります。
一部の高さが原因で不具合を感じている場合は咬合調整で大丈夫でしょうが、悪習慣からのズレがある場合は最初から削るのは危険です。なぜでしょう?
普段の生活の中で噛み合わせが悪くなるような習慣があるなら、その悪習慣を見直し改善してから本来の噛み合わせ治療を行うことが良いと思います。テレビを見ながら、足を組みながら食事する 寝ながらテレビを見る うつぶせ寝やいつも横向きで寝る 頬杖をつく 舌で歯を押すなど 知らないうちに噛み合わせに悪いことが原因で支障をきたしていれば、その習慣を見直さないで咬合調整することはとても危険な行為になります。習慣から噛み合わせに支障をきたしている場合は、まず習慣を見直しその上で必要であれば調整をするべきと考えています。咬合調整せず習慣を改善しただけで噛み合わせが改善することも多々あるからです。



外科治療が必要は場合、緊急な時を除き、術後の治癒が良好に経過するように術前に口腔内環境や術部周囲の環境を整えて行うことが大切です。なぜでしょう?
外科処置するにあたり環境を整えることは、外科治療の成功率を上げ、術後治癒も良く、再発防止にもつながるからです。
逆に環境が整っていない、細菌が多く付着し残っている環境で治療したらどうでしょう?
うまくいくものもいかなくなる可能性があると思いませんか。



ここではよくある例を挙げましたが…
このような事前準備は患者さんごと 治療内容によって個々に異なりますが、歯周病治療 根管治療 義歯治療など どんな治療の時にも必要になる場合があります。



自分が思うに…
治すための環境や習慣が整っていない状況で適切な治療は提供できないため、急を要しない場合は先ず本格治療の前に事前準備を行い、その後適切な治療に移りたいと考えています。治療の優先順位があることを理解して頂いた上で治療を受けて頂きたいと思っています。



しかし必ずしも全ての方に強制的にこのような方法で治療を提供しているわけではありません。環境は関係ないのでとにかく早く治療を済ませたい方もいらっしゃいます。そのような方の場合はその場しのぎの治療になる可能性があり、最善を尽くしても満足頂ける治療が提供できるかわからないことを納得して頂いた上で受けて頂いております。